研究課題/領域番号 |
19K04351
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
平木 英治 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (20284268)
|
研究分担者 |
梅谷 和弘 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (60749323)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 次世代パワーデバイス / 誤転弧発生メカニズム / 抑制理論 / 並列駆動 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでSiCやGaNといった次世代パワーデバイスの連鎖的誤動作解明に取り組んできた。ディジタル的なスイッチング(ON-OFF) 動作をするGaNパワーデバイスに発生する誤動作が,実はアナログ回路におけるバルクハウゼンの発振原理に基づいており,「GaNパワーデバイスが持つ端子間寄生容量と回路配線によるドレイン,ソース,ゲートの各寄生インダクタンスによって構成する三つのLC共振要素の共振周波数の大小関係を適切に制御することで誤動作抑制が可能である」という理論を,世界に先駆けて明らかにした。これは「配線インダクタンスを単に小さくするのではなく,GaNパワーデバイス自身が持つ寄生容量にあわせて配線インダクタンスを適切に調整することで連鎖的誤動作抑制が可能」なことを意味している。この理論はまだ普及が進んでいないGaNパワーデバイスに留まらず,SiCパワーデバイスにも適用できると考えている。 そこで,2019年度は,SiCパワーデバイスのターンオフ直後の単発誤動作に着目してその出現条件を実験的に明らかにした。さらに2020年度は,前年度に明らかになったSiCパワーデバイスのターンオフ直後の単発誤転弧の出現条件から,(1)誤転弧発生メカニズムの解明,(2)その抑制理論の構築を行い,抑制理論に一部基づいて設計したインバータ回路を試作した。 2021年度は,試作したインバータの実証評価を行い,誤動作を抑制するために「適切に」調整した配線インダクタンスがスイッチングサージに与える影響を調査すると共に,大容量化に向けたパワーデバイスの並列駆動への本抑制理論の適用方針について検討を始めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(2)おおむね順調に進展している。 ただし,現在入手可能なSiCデバイスは,設計技術の進歩により発振現象が出現しにくくなっており,実験的な検証が難しい事例が多くなっている。そこで,SiCデバイス に固執せず,特に大容量化を見据えた並列駆動時の発振現象抑制には,より高速で駆動可能なGaNデバイスへの適用も視野に入れて研究を進めた。COVID-19の影響により,半導体素子を始めとする実験装置作成用部品や計測機器の手配スケジュールに遅延が発生したが,実験方法や検証内容を見直すことで,概ね当初の計画から大きく逸脱すること無く進展している。2021年度の主な成果は以下の通りである。 (1) 誤転弧抑制のために「適切に」調整した配線インダクタンスがスイッチングサージに与える影響を調査した。 (2) パワーデバイスの並列駆動への提案抑制理論の適用方針に関する検討に着手した。
|
今後の研究の推進方策 |
現在入手可能なSiCデバイスは,設計技術の進歩により発振現象が出現しにくくなっており,実験的な検証が難しい事例が多くなっている。そこで,SiCデバイスに固執せず,特に大容量化を見据えた並列駆動時の発振現象抑制には,より高速で駆動可能なGaNデバイスへの適用も視野に入れて研究を進めていくこととする。 この点を除いては,多少の時間的遅延狂はあるが,研究開始当初の目的を概ね達成している。 従って,当初策定した計画に基づいて進めていく所存である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により,(1)当初予定していた学会発表がすべてオンラインになったこと,(2)当初予定していた回路部品等の入手が大幅に遅れたことにより若干性能を落とした代替品でカバーしたこと,が主な原因である。繰越額はレンタル機器の調達や代替回路部品の購入,さらには可能であれば学会参加のための出張旅費に当てる予定である。
|