2020年度までに構築した,誤転弧抑制理論「高速次世代パワーデバイスのターンオンおよびターンオフ時の誤転弧を抑制するための回路配線に寄生するインダクタンス成分とパワーデバイスに寄生する容量成分の適切な配分指針」を元に, 2020年度末に試作したインバータ回路を評価し,問題点を明らかにした。この問題点を解決した新構造を有する,パワーデバイス2並列接続した10kVA級の三相インバータを構築した。この新構造には,並列接続したパワーデバイスの誤発振抑制および電流流路の偏りを抑制する工夫を凝らしている。このインバータを,(1)ゲート信号の誤発振,(2)ターンオフスイッチングサージの大きさ,(3)電力変換効率,(4)放熱特性,といった観点から評価した。その結果,単相降圧チョッパ形式ではあるが,1.5kW/phaseでの安定動作に成功した。 現時点では,実験環境的な問題が原因でフルスペック評価を行うに至ってはないが,本研究課題の本質的な目的である「パワーデバイスの連鎖的誤転弧抑制指針の構築」および,その「指針を反映した回路基板デザインの実現」を,特定のアプリケーションではあるが,ほぼ達成することができた。三相インバータは基本的なHブリッジで構成されているため,他の電力回路トポロジーへの適用も比較的容易であると考えている。 本研究課題ではパワーデバイスの2並列回路での検討に留まっているが,さらなる多並列化に向けて,解決すべき課題はいまだ多く残されている。
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