研究課題/領域番号 |
19K04354
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
村松 和弘 佐賀大学, 理工学部, 教授 (30263627)
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研究分担者 |
高 炎輝 佐賀大学, 理工学部, 助教 (40586286)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 圧粉磁芯 / 磁界解析 / 均質化手法 / 磁区 / 異常渦電流損 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高周波用金属磁性材料である圧粉磁芯を用いた高周波リアクトルの小形・低損失化設計を可能にするため,粒子の非線形磁気特性,渦電流,及びばらつきを考慮した均質化手法による圧粉磁芯の磁界解析法を開発するとともに,開発した磁界解析法を用いて高周波用リアクトルを設計し,その試作実験により,開発した磁界解析法と設計の妥当性と有用性を示すことである. 2019年度は,圧粉磁芯の磁界解析法の開発準備として,均質化手法で用いる粒子一つのセルモデルの開発を行った.これまで,初期磁化曲線とヒステリシス損失に関しては,平均粒径と同等な立方体セルモデルで実測値を再現できていたが,渦電流損に関しては,古典渦電流損のみを考慮した解析では,粒子の大きさや形状のばらつき,絶縁物の厚みの不均一性,及び粒子間渦電流による渦電流損の増加などを詳細に考慮しても実測値が再現できなかった.そのため,渦電流損の増加要因である磁壁移動に伴う異常渦電流損について検討した.まず,磁区構造を周期的な一次元モデル(Pry and Bean model)と仮定した磁界解析により磁壁移動に伴う異常渦電流損を再現した.次に,古典渦電流損での検討と同様に,磁区幅に影響する粒子の大きさ,磁区幅自体,及び磁区の方向のばらつきによる異常渦電流損の増加を考慮した結果,特に,磁区の方向のばらつきによる渦電流損の増加が大きく,結果として,実測値を再現するセルモデルが構築できた. さらに,高周波リアクトルの設計準備として,高周波リアクトルをフィルター回路に用いるインバータ電源の回路方程式を構築し,回路解析を行えるようにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,磁界解析に均質化手法を導入するための準備として,圧粉磁芯の粒子一つのセルモデルの開発を完了する予定であった.結果として,実測の初期磁化曲線,ヒステリシス損失,渦電流損失の全てを再現するセルモデルは開発できたが,開発したセルモデルでは,当初,予定していなかった粒子内の磁区構造とそのばらつきまで考慮する必要があり,均質化手法では,磁界解析の分割図の要素毎にセルモデルの解析を行うため,磁区構造まで考慮したセルモデルをそのまま磁界解析に導入することは計算時間が膨大となり現実的ではない.従って,本年度開発したセルモデルを,簡略化するなどさらに改良する必要がある.また,本年度は実測の渦電流損を再現する磁区構造まで考慮したセルモデルの開発に時間を要したため,本年度開発予定であったインバータ回路を考慮した磁界解析法の開発が回路解析の開発までに留まった.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,本研究で開発した磁区構造を考慮したセルモデルの簡略化を行なうとともに,磁界解析法に実装し,「粒子の非線形磁気特性,渦電流,ばらつきを考慮した圧粉磁心の磁界解析法」を完成させる.さらに,2019年度に完了できなかったインバータ回路を考慮した磁界解析のソフトウェアも完成させし,インバータ電源の内部フィルタ回路に用いる100kHzの高周波用リアクトルの小形化・低損失化設計を実施する. 2021年度は2020年度に設計した高周波用リアクトルを試作するとともに,その検証実験を行い,開発した磁界解析法の妥当性と有用性を示す.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議での成果発表に学生も同行させたため,旅費が当初予定より多くなり,当初購入予定だった物品が購入できず,本年度は既存の設備を流用し,次年度に購入することにしたため.
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