研究課題/領域番号 |
19K04355
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
丸田 英徳 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00363474)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電力変換器 |
研究実績の概要 |
本年度は,モデル予測制御における演算量と安定性および応答性に関する検討を行った。DC-DCコンバータのモデル予測制御の組み合わせ的手法による実装を現在市販されている汎用DSP上で実装し,演算性能等の検証と問題点の改善を行った。前年度の研究内容である組み合わせ的手法によるモデル予測制御の実装では,制御量の分解能に比例する組み合わせ的な演算が必要であるため,演算量の削減すなわち組み合わせ候補の削減は,制御分解能の低下につながってしまい,特に定常状態での安定性に影響を及ぼす。そこで,高い分解能が必要とされる定常状態と,制御量の大きな変動が必要とされる過渡状態とで分解能の精度を動的に変化させる手法を提案した。提案手法において,定常状態では制御量のダイナミックレンジを小さくすることで,分解能の精度すなわち量子化誤差を小さくし,安定性を保証する一方,過渡状態では制御量のダイナミックレンジを大きくするために,分解能の精度を落とすことで,応答性を改善する。このように制御の分解能を見た目上動的に変更することで,定常状態での安定性を保ちつつ,過渡状態での応答性を補償することで,組み合わせ的手法によるモデル予測制御の演算量を一定に保つことが可能となる。モデル予測制御とニューラルネットワークによる制御手法と組み合わせる場合,モデル予測制御と制御分解能に起因する安定と応答性は,過渡状態におけるニューラルネットワーク制御の挙動,特に制御の切り替えや過補償の原因となる。よって,今度ニューラルネットワーク制御との組み合わせによる新たな制御手法を検討する際に,動的分解能変更を使ったモデル予測制御は有用となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組み合わせ的手法によるモデル予測制御において問題となる,制御量の分解能に起因する定常状態の安定性と過渡状態の応答性を両立させるために,動的に制御量の分解能を変更する手法を提案した。今後,ニューラルネットワーク制御と組み合わせる際に問題となる制御切替や過補償の抑制に対し有用である。
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今後の研究の推進方策 |
モデル予測制御とニューラルネットワーク制御を組み合わせ,安定性と高速応答性を両立することのできる制御手法の確立を目指す。また,システムのモデル化により,システム内のパラメータ推定を行うことが可能となるため,モデルパラメータの校正などの方法も同時に組み合わせることにより,モデル予測制御の高精度化を並行して検討する。
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