本年度は,モデル予測制御による安定性とニューラルネットワークによる応答性を同時に実現するために、それらを組み合わせたDC-DCコンバータの制御手法の検討を行った。 モデル予測制御では、モデルパラメータの値が設計値どおりに実現されていることが仮定されるが、現実的には、各素子のばらつきが存在し制御に影響を与えるため、観測データからパラメータを推定する手法を検討した。この手法によりモデルパラメータのうち変動することが想定されていないものについて、運用データからその値を推定することを可能とした。 DC-DCコンバータの制御において、定常時は、モデル予測制御により安定した運用が可能であるが、負荷変動による過渡時は、負荷の状態を検出することが出来ず、モデル予測制御に含まれるコンバータモデルにふくまれる負荷抵抗パラメータを変動にあわせて更新することができない。そのため、モデル予測制御に必要となる負荷抵抗の推定手法を検討し、推定した負荷抵抗によりモデルの更新を含む制御手法を検討した。しかし、負荷抵抗推定によるモデル予測制御のみでは、応答性に十分な向上が見られなかったため、負荷変動時にニューラルネットワーク制御に切り替えることで応答性の改善を行った。ニューラルネットワークの学習は、事前に与えた負荷変動のパターンごとに複数のニューラルネットワークが構成され、それらを推定された負荷変動に応じて切り替える手法が必要となる。そこで、先述の負荷抵抗推定手法を用いることで、ニューラルネットワークの切り替えを実現した。一方で、ニューラルネットワークを用いた制御は、応答性の改善とのトレードオフで過補償が発生する。そこで、過補償の抑制のために、負荷側のコンデンサに流れる電流を推定し、指令値を適正なタイミングで調整する手法を開発した。以上により、安定性と応答性を同時に実現する電力変換器の制御手法を実現した。
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