研究課題/領域番号 |
19K04367
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
羽渕 裕真 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (90241744)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 照明光通信 / 可視光通信 / 光無線通信 / 多値変調法 / 疑似雑音符号 / ターボ符号 / 強度変調/直接検波 / 階層化変調法 |
研究実績の概要 |
本研究のコンセプトは屋内外をシームレスにつなぐ『疑似雑音符号系列による知的照明光通信ネットワーク』の実現である。本研究では、情報を埋め込んだ照明光による屋内通信システムを構築することを目的とする。特に、(a) 照明機能・信号現示機能、(b) 通信機能、(c) 測位機能、(d) 物理層セキュリティ機能、を兼ね備え、申請者が独自に考案した『振幅レベルを2段階に制限した疑似雑音符号系列による知的照明光通信システム』の構築を目指す。本研究では、『基礎的性能検討段階』、『機能性能向上検討段階』、『統合化検討段階』の3段階を分けて検討する。2019年度は『基礎的性能検討段階』である。 [1]本研究では、これまでに考案した「拡張プライム符号を用いる可変N パラレルコードシフトキーイング(VN-CSK)システム」に着目し、測位システムおよびを照明光視覚復号型秘密分散システムを検討し、次の成果を得ている。①測位システムは各照明からの受信光強度と予め格子状に測定した参照受信強度分布との相関値により受信機位置を推定する方式である。この方式について、室内モデルを仮定し、計算機シミュレーションにより測位誤差性能を明らかにした。②視覚復号型秘密分散法を用いるシステムは、照明光の重なりを利用するものであり、これまでの各照明機器のデータ通信に付加する形で実現できることを示した。室内モデルを仮定し、誤り率性能において計算機シミュレーション結果と理論解析結果が一致することを示した。 [2] 光ターボ符号において、背景光や部分的なビット消失に対応できる情報ビットとパリティビットを融合する方式を考案した。ガンマガンマチャネルを仮定し、シンチレーションが大きい場合にも効果があることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は『基礎的性能検討段階』である。特に、[1]拡張プライム符号を用いる可変N パラレルコードシフトキーイング(VN-CSK)により光フィンガープリント測位法を実現した。[2]拡張プライム符号と変形擬直交M系列を融合する疑似雑音符号系列により照明光視覚復号型秘密分散システムを実現した。[3]情報ビットをパルス位置変調法で表現し、パリティビットをオンオフキーイングで表現するハイブリット型PPM-OOKターボ符号を構築し、性能を明らかにした。さらに、このハイブリット型PPM-OOKフレームの同期法を実現した。 それらの結果を、学術論文3編、国際会議論文10件(査読付き)、国内研究会等5件の発表を行った。そのため「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、4つの考案システムの高度化について研究を行う。さらに、軸となる変調方式(VN-CSK)と疑似雑音符号系列の設計指針をもとに、4つの要素システムの接続性を再検討し、統合設計指針を検討する。システム性能は申請設備を利用し、理論解析、計算機シミュレーションにより検討する。その成果は、国際会議論文や国内研究会にて発表し、その質疑や聴衆者の反応をもとに学術誌論文へと昇華させる。4つの考案システムについては、以下の通り2019年度の成果をもとに検討する。 (1)『拡張プライム符号と変形擬直交M系列を融合した疑似雑音符号系列(考案系列)によるVN-CSK方式』において、2019年度の成果をもとに人間の眼を対象にした調光制御と照明間干渉軽減を実現するシステムを検討する。 (2) 2019度の完全同期状態下での成果をもとに『情報ビットとパリティビットの信号再構成を行う光無線ターボ符号システム』において、フレーム同期法の検討および同期保持性能を考慮したビット誤り率性能を検討する。 (3)2019年度では室内空間を格子状に区切り、その格子点での受信電力強度分布をもとに『疑似雑音符号系列により光フィンガープリント測位法』が可能であることを示した。その性能を改善するために複数の格子点を利用する方法やR,G,Bに信号色分解する方法を検討する。 (4) 『照明光視覚復号型秘密分散法』として、(2,2)視覚復号型秘密分散法の適用を試み、照明機器が2つである場合について、実現可能性を示した。照明機器が3以上への拡張について検討する。さらに、各照明機器からのメッセージデータと視覚復号型秘密分散データとの融合法について再検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により発表予定であった研究会が中止になったため、2019年度に残額が生じた。次年度の研究発表および調査のための参加費および投稿料に使用する。
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