研究課題
様々なIoTデバイスの登場により、複数の送受信者が同時に通信を行う機会が増加している。このような通信では、送信者が遠隔地に存在することが想定されるため、全送信者が完全に同期して同時刻に動作することは困難である。したがって、同期していることを仮定しない非同期通信を考えることが重要になる。本研究では、非同期通信における通信速度やデータ圧縮率の理論限界を、いくつかの通信システムに対して解明することを目的とする。またこの目的を通じて、非同期通信の理論限界の解明に向けた基礎理論を構築することを目指す。2021年度には以下の成果を挙げた。複数の送信者が雑音のない高信頼な通信路を通じて、受信者にデータを送信する際に用いられる通信システムにWyner-Ziv(WZ)システムがある。この通信システムでは、2名の送信者のうち1名の保有するデータは圧縮してから、もう1名の保有するデータはそのまま単一の受信者に送信する。受信者は各々の送信者から受け取ったデータをもとに、圧縮されたデータの歪みを許容して復元する。この通信システムに対して非同期通信におけるデータ圧縮率の理論限界を解明するために、同期通信における理論限界を詳細に研究し、その理論限界がデータの取り得る値の集合によって表されるグラフの彩色数によって特徴づけられることを示した。また、この成果はIEICEの英文論文誌に掲載された。研究期間全体を通じて、いくつかの通信システムに対して、非同期通信におけるデータ圧縮率の理論限界を解明することができた。また、本研究を通じて、データ圧縮率の理論限界とグラフの彩色数との密接な関係を解明することができた。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E105.A ページ: 353~362
10.1587/transfun.2021TAP0005