研究課題/領域番号 |
19K04370
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
市野 将嗣 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (80548892)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生体認証 |
研究実績の概要 |
近年,カメラの技術が進歩し高解像度の動画像撮影が可能となり,さらにサーモグラフィの低価格化が進み,身近なところで使われ始めている.これらを組み合わせると一度に数十のモダリティを取得することが可能になった.しかしこれまでの研究の多くは計測装置の発展を利用しておらず,あらかじめ対象アプリケーションを想定し,2つもしくは3つのモダリティの融合が中心である.本研究では,マルチモーダルバイオメトリクスとして,特徴の異なる複数種類のカメラから一度に取得できる多くのモダリティに対して認証環境におけるモダリティ毎の個人性に基づき,動的にモダリティを使い分けて組み合わせることによる認証を確立する. 虹彩認証は,指紋認証などのほかの生体認証と比べて,非常に高い認証精度を持つ.しかし,この虹彩認証は至近距離での撮影が必要となるため,被認証者の負担が大きくなり,利便性が低下するという問題点がある.これを軽減するために,認証機器から離れた距離で虹彩を撮影する方法が考えられるが,画質劣化による認証精度の低下が報告されている.この問題に対して,虹彩認証と比べて利便性が高い認証方式として,目の周辺画像を用いた認証が注目されている.目の周辺画像を用いた認証にDeep Learningを用いる方法と虹彩と目の周辺の統合方法を検討し,従来手法との比較を行った. また,サーモグラフィから取得された顔動画像を用いた認証方法の検討を行った.今年度は,サーモグラフィで取得した動画像から心拍による顔の温度変化を取得し,その変化を認証へ利用することの可能性について検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
可視光カメラによる画像を用いた目の周辺認証に関して,Deep Learningを用いて,認証の精度向上を目的とした検討と実装,評価を行ったのは予定通りである.虹彩認証と目の周辺認証を組み合わせた先行研究では,部位ごとの個人性に関して十分に検討されていない.それを踏まえ,両目の虹彩,目の周辺とその分割画像から得られる特徴量それぞれに対して統合する手法を検討した.また,サーモグラフィから取得された顔動画像を用いた認証方法の検討を行った.評価実験を行い,ROCカーブ,識別率等の結果を通して認証に利用できる可能性があることを示した.
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今後の研究の推進方策 |
令和1年度に引き続き, XGBoostを用いてモダリティを組み合わせた認証の実装と評価を行い,有効なモダリティの組み合わせを明らかにし,本技術の改良を続ける.カメラ,サーモグラフィから取得した画像から,顔,目の周辺を抽出し,認証する識別器を作成する.特に,データの特性を考慮して,前処理,特徴抽出,識別アルゴリズムの検討を行う.サーモグラフィから取得した画像を用いた認証については,前年に引き続き,心拍による顔の温度変化に着目し,変化の表現方法を検討し,認証方法への利用を検討する.目の周辺認証については,虹彩や強膜を用いた認証を検討し,多くの特徴量の組み合わせ方法についても検討する.研究成果については,適宜,国際会議や論文誌,国内研究会等への投稿を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は理論的な検討が中心であり,当初予定していた設備備品の購入を繰り越したため 次年度使用額が生じた. 使用計画については,学会発表や論文誌投稿を進めるためその費用を予定している.本研究に関連のある国内会議,国際会議等に参加して情報収集を行う.また,研究の進捗状況に応じて,評価実験を行うための計算機やソフトウェアの購入を予定している.
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