近年,カメラの技術が進歩し高解像度の動画像撮影が可能となり,さらにサーモグラフィの低価格化が進み,身近なところで使われ始めている.これらを組み合わせると一度に数十のモダリティを取得することが可能になった.しかしこれまでの研究の多くは計測装置の発展を利用しておらず,あらかじめ対象アプリケーションを想定し,2つもしくは3つのモダリティの融合が中心である.本研究では,マルチモーダルバイオメトリクスとして,特徴の異なる複数種類のカメラから一度に取得できる多くのモダリティに対して,動的にモダリティを使い分けて組み合わせることによる認証を確立する. 虹彩認証は,指紋認証などのほかの生体認証と比べて,非常に高い認証精度を持つ.しかし,この虹彩認証は至近距離での撮影が必要となるため,被認証者の負担が大きくなり,利便性が低下するという問題点がある.この問題に対して,虹彩認証と比べて利便性が高い認証方式として,目の周辺画像を用いた認証が注目されている.それを受けて,可視光カメラで取得した可視光顔画像とサーモグラフィで取得した熱顔画像を組み合わせて目の周辺認証を行うことを検討した.はじめに,可視光顔画像と熱顔画像のそれぞれに対しての目の周辺画像を用いた認証にDeep Metric Learningを用いる方法を検討した.次いで,可視光顔画像と熱顔画像に対してXGBoostを利用したスコアレベル統合で組み合わせて目の周辺認証を行う手法を提案し,先行研究との比較を行い実験的に提案手法の有効性を示した.また,可視光顔画像による認証には照明条件により認証精度の低下が生じることが指摘されている.それを受けて,照明条件に影響受けない熱顔画像から可視光顔画像へ変換してから目の周辺認証を行う方法の基礎的検討を行った.
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