本研究では,直交周波数分割多重(OFDM)の信号上でコードシフトキーイング(CSK)による情報伝送を行う通信方式を研究し,光無線通信に応用することを研究している.OFDM信号上でCSKを実現するために,本研究ではOFDM信号に対するプリコーディング処理に着目している.これにより,情報伝送効率の向上と誤り率特性の改善の両立を目指している.令和5年度の研究実績の概要を以下に示す. 1. OFDM方式におけるサブキャリアを幾つかのサブブロックにグループ分けし,各サブブロックにおいてプリコーディング処理を行う方式の研究を進めた.このプリコーディング処理は,Zadoff-Chu系列から得られる行列(ZC行列)を複数用意し,それらを選択的に用いることによって実現する(プリコーディング行列選択法).令和5年度は,プリコーディング行列選択法を光無線OFDM方式へ応用し,その性能を計算機シミュレーションによって解析した.解析の結果、プリコーディング行列選択法は,光無線通信においても従来の光無線OFDM方式と同等の誤り率特性を達成しながら,情報伝送効率を向上できること明らかにした.この成果については,学会発表を行った. 2. OFDM方式の送信機で行う逆フーリエ変換処理とプリコーディング処理の統合を理論的に解析した.その結果,サブキャリア数をN,プリコーディング行列をZC行列とした場合,これらの統合処理と等価な処理は,わずかN回の複素乗算で実現できることを示した.また,統合処理におけるZC行列の生成パラメータの影響も数学的に明らかにした,この解析により,プリコーディング処理を施したOFDM信号はシングルキャリア信号と同等になることが示され,ZC行列によるプリコーディング処理によってOFDM信号のピークが低減されるメカニズムが明らかになった.この成果についても,学会発表を行った.
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