研究課題/領域番号 |
19K04375
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
大柴 小枝子 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (90372599)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光無線通信 / 可視光通信 |
研究実績の概要 |
本研究では、LED照明光を光源として符号拡散通信と色(波長)多重通信を組み合わせ、さらに多重信号分離にMIMO処理技術を用いることで、雑音耐性が高く、かつ、IoT時代に対応できるマルチアクセス通信を実現することを目標とする。一方で、照明機器を用いた可視光通信では通信機能を付加したことにより、ユーザにとって不快となる要因が生じないことが、ユーザ体感品質(QoE:Quality of Experience)を満足させる重要な条件として求められる。 本年度は、LED照明を構成する波長多重数を5~8波長に拡大し、より波長間隔が狭く多チャンネル雑音の多い状態でも機械学習を用いることで、柔軟に雑音除去が可能であることをシミュレーションおよび実験で明らかにした。 さらに、ヒトのサーカディアンリズムに影響を及ぼす光の量であるメラノピック照度に着目し、同じ色温度でもスペクトル分布の異なるLED照明を試作し、多色LEDの強度分布とユーザ体感品質と関係を明らかにした。具体的には、色温度と照度が一定で,一日の時間によってメラノピック照度が制御可能であるLED照明の実現を検討した.これまでメラノピック照度がどのような時間変位を辿ればメラトニンの分泌抑制に最適であるかは明らかにされていない.そこで,人間の生存に不可欠である太陽に着目し,太陽光のメラノピック照度と照度の一日の時間変位を明らかにすることで,LED照明のメラノピック照度の時間変位の基準とし、その基準に基づきLED照明を構成するピーク波長の異なる複数のLEDの光度比を変化させることで,色温度と照度が一定でメラノピック照度が制御可能であることを明らかにした. 以上より、本研究の目標とするユーザ体感品質と通信品質の両方を最適化する照明環境の設計の自由度が広がる効果が得られ、照明学会や電子情報通信学会での論文発表でも注目を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では以下の三つの課題について研究を行うことを計画している。 ア)可視光通信時の照明空間における視認性環境学習・分析・予測技術 イ)マルチアクセス可視光通信のスペクトル管理・最適化と逐次干渉キャンセラによる色分離技術 ウ)ショウジョウバエを用いたサーカディアンリズムへの影響評価実験 このうち、ウ)については、一昨年度明らかにした内容を査読論文に投稿し、出版された。イ)については、コロナ禍の影響で、シミュレーションによるアプローチを中心に 検討を行い、その結果、機械学習を用いることで、色分離後の特性を改善することができることを明らかにした。以上のことから、当初の計画では予想していなかった成果が得られ、この結果を盛り込んだ光源の1次試作は今年度に実施することとなった。コロナ禍によりLEDや半導体部品の調達が遅れたため、2次試作が未達である。更に、コロナ禍のため主観評価実験の実施が困難であり、ア)について今年度中に達成することができなかった。そこで、研究実施期間を当初の計画より1年間延長した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では以下の三つの課題について研究を行うことを計画している。 ア)可視光通信時の照明空間における視認性環境学習・分析・予測技術 イ)マルチアクセス可視光通信のスペクトル管理・最適化と逐次干渉キャンセラによる色分離技術 ウ)ショウジョウバエを用いたサーカディアンリズムへの影響評価実験 イ)については、機械学習を用いることで、色分離後の特性を改善することができることを明らかにしたが、各色の強度分布特性と通信品質の関係についての詳細な検討を行う。イ)の結果に基づいて試作した光源を用いて、主観評価実験により、ア)についてのデータ取集を実施する。さらにマルチ波長での光符号の組み合わせを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、実験実証計画からシミュレーションを中心とした検討へと計画の変更を行った結果、機械学習による特性の改善について新たな知見を得たこ とから、実証実験計画が一昨年より次年度以降へ繰り下げて実施している。さらにコロナ禍の影響で、半導体部品の納期が遅れており、1次試作しかできなかった。その結果、物品費について次年度使用となった。また、国際会議・学会がコロナ禍の影響で、オンライン開催となったため、旅費の支出がなかった。
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