研究課題/領域番号 |
19K04376
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
岡田 実 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10252587)
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研究分担者 |
DUONG QuangThang 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (40757811)
Chen Na 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80838342)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ワイヤレス給電 / 平行二線 / 伝送線路 / 複数受電端末 / MIMO |
研究実績の概要 |
本研究は産業ロボットや電気自動車等走行中受電対象向けの高効率かつ安定な無線給電技術の構築を目指すものである. これまで,平行二線路式ワイヤレス給電システムについて,給電エリアを簡易に拡張できる点について電磁界シミュレーションで立証してきたが,大電力給電の性能を実測で評価していなかった.そこで,本研究課題では,大電力給電を可能にするために,平行二線路の設計を変更した.また,平行二線路周辺の漏洩磁界を減らすため,平行二線路近傍に第3の平板導体を配置する構造を検討した.次に,平行二線路への励磁電流の供給を「定電圧並直列共振形インバータ」に変更した.さらに給電コイルとして,幅広で扁平であり長尺の平行二線路を考え,縮小スケールモデル試作し,理論的に示された給電性能を実験的に確認した.その結果,具体的には,以下の成果が得られた. (1)大電力給電に対応するため,平行二線路を構成する導体の構造をスリット付き平面構造とし,計算機シミュレーションにより電流分布の計算を行った.その結果,スリット周辺に電流の集中が見られるが,問題となるほどではなく,大電力給電が可能であることがわかった. (2)上記の平行二線路の下部に平板導体を配置することにより,線路周辺への漏洩電磁界を減らす対策を行った.計算機シミュレーションの結果,外部への漏洩電磁界が大幅に減少できることがわかった. (3)(1)(2)の効果を実験により確認した.実験では周波数85kHz,500mの平行二線路に相当する縮小スケールモデルとして,周波数13.56MHz,線路長3mのシステムを試作した.ワイヤレス給電効率の基本特性および線路周辺の漏洩磁界の測定を行い,計算機シミュレーションの同等の結果となり,高効率かつ安定な走行中ワイヤレス給電が可能であることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電界シールド付き,平行平板二線路ワイヤレス給電システムを提案し,計算機シミュレーションおよび縮小スケールモデルによる試作実験を行いその性能評価を行った.ワイヤレス給電の給電効率や線路周辺の漏洩磁界分布の解析を行った結果,本提案手法が,走行中ワイヤレス給電方式として有効であることを明らかにすることができた.現実的な電源を接続したときのシステム全体の効率やスプリアス放射など,更に検討を行う項目が残っているが,概ね研究計画どおりの結果を得ることができている.
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今後の研究の推進方策 |
今後,定電圧並直列共振形インバータ電源を接続したときのスプリアス特性,システム全体の給電効率などについて検討を進める予定である.また,大電力運用時の漏洩電磁界およびスプリアス特性について,評価および削減手法の検討を行う. また,2020年度は,電源,線路および受電器が複数存在する場合について検討を行う.一般に,ワイヤレス給電システムにおいて複数の送受電器が存在すると,相互結合により効率が低下する問題がある.整合回路を工夫することで相互結合対策が可能であることが今までの検討によりわかっているが,相互結合量が動的に変化する走行中給電システムでは整合回路のパラメータを適応制御する必要があるため,走行中給電時の相互結合対策に注力して研究をすすめる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置の試作について必要な物品の使用を見直した結果,計画よりも使用額を削減することができた.この削減額を用いて,当初予定の研究計画である複数送受電器によるワイヤレス給電の検討における送受電器数を増やすことを予定している.このことで,当初計画よりも制度の高い実験が可能であると考えられる.
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