研究課題/領域番号 |
19K04379
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
伊藤 登 東邦大学, 理学部, 教授 (00237041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 波形伝送 / 非線形位相 / 全域通過 / 位相補償器 / 安定余裕 |
研究実績の概要 |
ディジタル通信において、通信路の非線形位相特性は伝送信号の波形歪みを引き起こし、伝送波形の忠実度を損ない、ディジタル通信の品質を著しく劣化させる。このような波形歪みを解消するため、本研究では、これまで行ってきた全域通過可変位相補償器を更に発展させ、高次の全域通過可変位相補償器に一定の安定余裕を持たせる高次・高安定・全域通過可変位相補償器の最適設計法を開発し、高精度な位相補償を実現する。本研究では、安定余裕三角形を低次と高次の全域通過可変位相補償器の最適設計に応用し、高安定性をもつ全域通過可変位相補償器の最適設計法を開発する。
2019年度の研究では、全域通過型伝達関数と安定余裕三角形に基づき、主に以下のような設計法開発と設計誤差導出を行った。
① 研究の初期準備として、高次の全域通過固定位相補償器の安定性制約なし最適設計法を開発した。この設計法は位相誤差の最小化に基づくもので、非線形最適化手法を応用し、設計された全域通過固定位相補償器の安定性は伝達関数の極の位置により確認される。② 2次の全域通過固定位相補償器の双線形誤差関数を導出し、安定余裕三角形を2次の全域通過固定位相補償器の最適設計に応用し、設計例を用いて安定余裕の保証確認を行った。③ 2次の全域通過固定位相補償器の新しい誤差を導出し、安定余裕三角形に基づく2次の全域通過固定位相補償器の最適設計を行い、設計例を用いて安定余裕の保証確認を行った。④ 安定余裕三角形を高次の全域通過固定位相補償器の最適設計に応用し、一定の安定余裕をもつ高次全域通過固定位相補償器の最適設計法を開発した。この設計法は非線形最適化手法を応用し、位相誤差の最小化を行ったものである。非線形最適化によって得られた全域通過固定位相補償器の安定余裕は設計例を用いて確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全域通過固定位相補償器の設計は全域通過可変位相補償器の設計の基本であるため、2019年度の研究では、主に安定余裕三角形を2次の全域通過固定位相補償器の最適設計と高次の全域通過固定位相補償器に応用し、安定余裕の保証確認を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、2019年度の研究を更に発展させ、以下のように本研究を進めて行く。
① 2次の全域通過固定位相補償器の双線形誤差関数を高次の場合に拡張し、縦続型高次の全域通過固定位相補償器の誤差関数を導出し、縦続型高次の全域通過固定位相補償器の最適設計法を開発する。② 安定余裕三角形を2次の全域通過可変位相補償器の最適設計に応用し、一定の安定余裕をもつ2次の全域通過可変位相補償器の最適設計法を開発する。設計例を用いて得られた2次の全域通過可変位相補償器の安定余裕を確認する。③ 安定余裕三角形を高次の全域通過可変位相補償器の最適設計に応用し、一定の安定余裕をもつ高次の全域通過可変位相補償器の最適設計法を開発する。設計例を用いて得られた高次の全域通過可変位相補償器の安定余裕を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議の登録料は最初見積もった額より少し安かったため、2019年度の助成金は少し残った。
使用計画:2019年度の未使用額と2020年度の請求額を合わせて使用し、縦続型高次の全域通過固定位相補償器と2次の全域通過可変位相補償器の設計法を開発する。研究成果を世界に向けて積極的に情報発信するため、権威のあるIEEEの国際会議をはじめとする国際会議に出席し、研究成果の発表を行う予定である。つまり、本研究助成を有効に活用し、高次・高安定・可変位相補償器の様々な最適設計法を開発して、世界に向けて積極的に情報発信を行う。
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