研究課題/領域番号 |
19K04380
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石川 博康 日本大学, 工学部, 教授 (20536495)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 無人航空機 / ドップラーシフト / ユーザ位置検出 / 位置検出精度 / マルチパス / 周波数オフセット / 測位精度指標 / 最大位置検出誤差推定方式 |
研究実績の概要 |
令和元年度においては、UAVを用いたユーザ位置検出手法の実用性・有効性を明らかにするため、実環境下を想定したシミュレーション評価に着手した。具体的には、UAV-ユーザ端末間の電波伝搬モデルの構築を目的として、レイトレーシング法に基づく電波伝搬解析用ソフトウェアツールであるRapLabを調達し、シミュレーション評価用のデスクトップPCにインストールして研究開発環境を整えた。 次に、UAV-ユーザ端末間の基本的な電波伝搬モデルとして、大学キャンパスとその周辺部の建物を模擬した3Dモデルを作成し、地上高1mの固定端末からトーン信号(周波数=5.060GHz、送信電力=1W)を送信し、上空150mを時速40kmで周回飛行する1機のUAV(Rx)が受信する場合を想定してシミュレーション評価を行った。なお、UAVは簡易的に半径60mの円周を模擬した軌道上を時計回りで飛行するものと仮定した。UAVの複数飛行位置においてドップラーシフト量と受信レベルの分布を取得した結果、Tx-UAV間が見通し内環境ではドップラーシフトの分布が集中し、広がりが小さいため、高精度の位置検出が可能となる一方、見通し外環境ではドップラーシフトの分布が真の値からずれており、受信レベルが比較的大きなケースもあることから、ドップラーシフトの誤検出に伴い位置検出精度が劣化する恐れがあることが明らかとなった。 その他、位置検出アルゴリズムの提案及び評価結果を取りまとめた論文を投稿し、採録・掲載されるに至った。また、測位精度指標に基づく最大位置検出誤差推定方式を提案し、1機の曲線飛行を行うUAVモデルを対象とした特性評価結果を英文論文に取りまとめて投稿し、採録が決定した。さらに、高度の異なる2機のUAVによる位置検出手法、並びに、旋回半径の異なる1機のUAVを用いた位置検出手法の特性評価を行い、研究会や大会等で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3年間の研究期間内において、以下の項目の研究開発を行うことを予定している。 ①UAV-ユーザ端末間の電波伝搬モデルの構築: UAV-ユーザ端末間の電波伝搬モデルをシミュレーションプラットフォーム上に構築する。②航空機のフライトシミュレーションツールを用い、飛行位置制御誤差を物理的に導出する。③評価対象エリア内の任意の位置にユーザを配置した場合について、任意の時刻における位置検出精度を導出するシミュレーションソフトウェアを開発する。④低CN環境下やマルチパス環境下において、ドップラーシフト量を精度良く抽出するため、CW発振器とディジタル信号処理用受信機及びスペクトルアナライザなどの各種測定器を用いた特性評価を室内実験により行う。⑤各種劣化要因の対策・軽減技術や位置検出精度改善手法、UAV配置法、測位演算アルゴリズムを提案し、簡易かつ省電力なユーザ位置検出システムの実用化モデルを確立し、必要となるスペックや要求条件を明らかにする。 このうち、初年度は①の研究開発ツールを調達して3Dモデルを作成し、1機のUAVの円旋回モデルを対象としたマルチパス環境におけるドップラーシフト分布の基本評価を実施するとともに、③の汎用評価用シミュレーションソフトウェアの基本機能についてプログラミング作成を実施した。②と④については既存ツールや測定器等の整備を中心に検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
UAV-ユーザ端末間の電波伝搬モデルの構築については、UAV-ユーザ端末間の電波伝搬モデルとして建物や障害物、森林や降雪等で生じる減衰量を用いて電波伝搬モデルを構築することを検討し、さらに、大地や建物、並びに、丘陵等の自然地形等により生じるマルチパスの影響を含めたモデルへの拡張を進める。UAVの飛行位置制御誤差に関する検討については、MATLABのフライトシミュレーション用のライブラリの適用検討を進めるが、ドップラーシフト量の誤差推定が困難な場合には簡易的なモデルを検討して研究を進める。 また、モンテカルロシミュレーションプログラムの開発については、三次元(高度情報も含む)の位置検出対応なモデルへの拡張、並びに、実用面の観点からUAVと地上端末の周波数クロック差に基づくドップラーシフト観測値に含まれる周波数オフセット量を最小二乗法に基づき推定する手法を優先して新たに検討する。 実験系については基本動作チェックを行い、ドップラーシフト量のハードウェアによる検出手法について検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
広島大学で開催予定であった2020年電子情報通信学会総合大会に研究協力者3名が投稿し、その出張宿泊費として約200,000円を計上していたが、コロナウィルス感染症の影響により学会開催が中止となったため、次年度使用額として生じることとなった。令和2年度の使用計画としては、採録が決定している英文論文掲載料の一部に充てる予定である。
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