令和元年度はUAV-ユーザ端末間の基本的な電波伝搬モデルとして、大学キャンパスとその周辺部の建物を模擬した3Dモデルを作成し、見通し内環境ではドップラーシフトの分布が集中し、広がりが小さいため、高精度の位置検出が可能となる一方、見通し外環境ではドップラーシフトの分布が真の値からずれ、ドップラーシフトの誤検出に伴い位置検出精度が劣化する恐れがあることが明らかとなった。また、位置検出アルゴリズムの提案及び評価結果を取りまとめた論文を投稿し、採録・掲載されるに至った。 令和2年度は都市環境エリアの3Dモデルと山岳エリアの3DモデルをRapLab上で作成し、UAV-ユーザ端末間に存在する建物や障害物、周辺の山の斜面等で生じる反射や回折、遮蔽により生じる受信信号強度の減衰量やドップラーシフトのオフセット量をレイトレーシング法に基づき詳細に評価・解析した。その結果を取り纏め、電子情報通信学会和文論文誌に投稿し、採択・掲載に至った。 令和3年度はシミュレーションプログラムを三次元位置検出が可能なモデルへ拡張し、実用面の観点からUAVと地上端末の周波数クロック差に基づくドップラーシフト観測値に含まれる周波数オフセット量を最小二乗法に基づき推定する手法を開発した。3機の周回飛行を行うUAVを用いた位置検出手法において、ドップラーシフトの観測回数を2回に増やして最小二乗法を拡張することにより、大幅な精度改善が実現可能であることを明らかにした。この検討内容を論文に取り纏めて投稿し、採択が決定した。 令和4年度はドップラーシフトの観測回数を3回~6回に拡張し、多重観測に基づく測位精度の改善効果をシミュレーションにより詳細に評価した。その結果、観測回数を2回に増やすことにより顕著な改善量が得られ、さらに4回まで拡張すると高精度の位置検出が実現可能であることを明らかにした。
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