研究実績の概要 |
本研究は従来のカバー以下の薄さでも収束効果が得られるミリ波アンテナ用誘電体レンズを開発する。トポロジー最適化による平坦なレンズ形状を実現する設計技術と,高誘電率の樹脂系基板材料による波長短縮効果を組み合わせ,薄型誘電体レンズの開発が本研究の目的である。誘電体レンズの微細な空間的分布を最適化する手法として正規化ガウス関数ネットワーク(NGnet)を用いたトポロジー最適化を導入し,さらに誘電体層とメタ構造金属膜の複層化によるフィルタ特性などの機能追加についても検討した。 薄型誘電体レンズの設計パラメータに関して基礎特性を明らかにするために, FDTD法(時間領域差分法)による解析を行った。76GHz帯のミリ波領域ではアンテナ近傍にある誘電体の影響が大きいことが分かり,利得を改善可能な基本構造について明らかにした。次に,トポロジー最適化を用いて誘電体レンズの設計を行ったが,アンテナとレンズが接している状態では利得の低下が避けられず,先に得た知見を用いて設計領域を修正した。設計領域の厚さを変えて設計を行った結果,従来モデルよりも半分程度の厚さまで薄くすることができたが,設計性能に限界があった。そこで,NGnetの基底数を増やし,設計を微細化すると従来モデルよりも1/4程度の厚さまで薄いレンズを設計できることを示した。 次に,FSS(周波数選択膜)搭載したアンテナの設計を行い,アンテナにフィルタ特性を追加できることを解析的に明らかにした。FSSの設計にはトポロジー最適化を用い,アンテナ極近傍に置いた状態で金属パターンを設計できることを示した。
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