本課題では、光検出器(PD)アレーと位相回復信号処理を用いて計算的に同期検波を実現する位相回復型光コヒーレントレシーバ技術を提案し、その要素技術の確立に取り組んだ。 通常同期検波に必要となる局発光源や光ハイブリッド回路を必要としない本技術により、近・中距離大容量光ファイバ伝送向けの小型低廉な光コヒーレントレシーバの実現が期待される。 初年度においては、光変調信号の離散性を用いた位相回復アルゴリズムを新たに提案し、高速2次元PDアレーとマルチモードファイバ(MMF)型散乱体を用いた実証実験系で、40Gbps 光偏波多重QPSK信号や10Gbaud OFDM信号などの位相回復受信に成功した。 2年目においては、MMFモードカプラを用いた散乱体と交互方向乗数法(ADMM)を用いた位相回復アルゴリズムにより、40Gbps偏波多重QPSK信号を8PDで、すなわち空間チャネルあたり4PDで受信可能であることを実験的に明らかにした。 さらに、位相回復型受信方式を応用した光IQ変調器の特性評価手法についても新たに提案し、原理検証実験を行った。 最終年度においては、1、2年目に提案・評価した位相回復アルゴリズム及び光前処理回路(散乱体)を統合し、これにより16QAM信号をチャネルあたり6PD、かつ現実的な演算量で復調できることを明らかにした。一方、位相回復を応用した変調器モニタリング技術については、位相回復に用いるモデルを拡張することで、偏波多重信号や非線形歪(Volterraフィルタ型)までをPDによる強度情報のみから推定可能とすることに成功した。
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