研究課題/領域番号 |
19K04389
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石井 望 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50232236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 100kHz帯 / 比吸収率 / プローブ / 標準ダイポール / 校正 |
研究実績の概要 |
電気自動車における無線充電技術が開発されており、それに対応する比吸収率(SAR)測定法を確立する必要がある。SAR測定で鍵となるのは、電界レベルを検知するために利用されるプローブの校正技術である。本研究では、EV無線電力用に検討されている100kHz帯におけるプローブ校正の基盤となる、液剤中における標準ダイポールアンテナによる平均電界強度推定法について検討する。すでに、研究代表者によってMHz帯での平均電界強度推定法は確立されている。本研究では、この手法を100kHz帯への拡張を確認することを目的とする。 令和2年度は、(1) kHz帯における食塩水内におけるダイポールアンテナによる電界強度の不確かさを解析するための基礎検討として、令和元年度に構築した3軸実験系を利用して、送信アンテナからの放射電界強度を三直交受信アンテナにより受信し、プロファイル化を行った。(2) シース付折り返しダイポールアンテナの試作を行い、その送信アンテナ係数の測定を実施した。50kHzの場合、アンテナの反射特性S11, S22の大きさが極めて1に近く、アンテナ整合を取ることが難しいことが判明した。S21の距離特性について、令和元年度に実施したシース付ダイポールアンテナに比べて、全体的にレベルが低くなり、測定できる距離範囲が限られてしまうという問題が生じた。ダイポールに比べて構造がやや複雑になるうえ、反射特性、伝送特性ともダイポールに劣り、折り返し効果を享受できないことから、基準アンテナとしてシース付ダイポールアンテナを利用することとした。(3) ラテラル波の発生を分析するために、大気・海水2層の境界値問題について、電磁界をスペクトル積分にて表現し、その評価を行った。その結果、Bessel関数の零点に着目する二重指数関数型積分公式を利用することにより、高速かつ精度よく積分が評価できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時における本研究の到達目標として、(A) 100kHz帯における食塩水中での標準ダイポールアンテナの送信アンテナ係数評価、(B) 100kHz帯における食塩水中での動作する標準ダイポールアンテナの実現・改良、(C) 上記送信アンテナ係数評価が適正に実現可能となる距離の確定とその理由付けが設定されている。 令和元年度は、目標(A)については、実験系構築完了時に送信アンテナ係数の評価そのものは完了している。目標(B)については、シース付ダイポールアンテナの試作を終えており、その送信アンテナ係数などの特性については評価済である。目標(C)に関連して、最適化距離などの検討は令和2年度以降の課題となる。 令和2年度は、目標(A)について、微小ダイポールアンテナを仮定した空気と導電媒質の2層構造問題についてスペクトル積分を含む解析的な定式化を行い、FDTD法についても2層構造問題に対してシミュレーションを開始したところである。目標(B)について、折り返しダイポールアンテナについて試作・検討を行ったが、ダイポールアンテナに比べて構造が複雑になるのに対して、反射特性、伝送特性とも優位性を見出させなかった。これは、折り返しダイポールアンテナがループアンテナと同様に、反射係数の大きさがほぼ1であるような特性を示すためであると考えている。目標(C)については、90cm×60cm×45cmの水槽に食塩水をみたし、ダイポールアンテナ間の距離を変化させる際に、ゲーティング機能により多重反射を抑制し、測定系に生じるコモンモードを除去することにより、送信アンテナ係数評価が適正に実現できる距離を見出した。その結果、コモンモードのみならず、水槽壁面からの反射も考慮して、アンテナ間距離を変化させる必要があるという知見を得ている。 以上のように、設定した目標に対し、概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
kHz帯における伝送特性S21等の距離特性から不要外乱要因を取り除く手法について検討することである。ラテラル波であれば、水面もしくは水槽側面からの距離 を変化させることによりラテラル波優勢となるポイントを変更することで確認できる。コモンモードの影響であれば、コモンモード抑制手法である、ネットワー クアナライザのタイムドメイン機能を利用した、コモンモードに係わる多重反射の時間的フィルタリングにより除去可能である。これらの実験的手法に加えて、 数値手法を併用することにより、外乱要因を特定することとしたい。
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