電気自動車における無線充電技術が開発されており、それに対応する比吸収率(SAR)測定法を確立する必要がある。SAR測定で鍵となるのは、電界レベルを検知するために利用されるプローブの校正技術である。本研究では、EV無線電力用に検討されている100kHz帯におけるプローブ校正の基盤となる、液剤中における標準ダイポールアンテナによる平均電界強度推定法について検討する。すでに、研究代表者によってMHz帯での平均電界強度推定法は確立されている。本研究では、この手法を100kHz帯への拡張を確認することを目的とする。 令和3年度は、(1) 令和2年度まで測定した、100MHz帯における 0.074mol/l 濃度食塩水内におけるシース付ダイポールアンテナの伝送係数 S21 ならびに送信アンテナ係数の距離特性について、モーメント法による数値計算結果と比較した。反射係数 S11 および S22 の大きさの違いを除くと、ゲーティング機能を用いて不平衡電流の寄与を軽減することにより、S21 ならびに送信アンテナ係数の距離特性が一致することを確認した。このことにより、送信アンテナ係数を評価するためのアンテナ間距離についての知見が得られた。(2) 1点給電シールデッドループアンテナによるプローブ較正の可能性を検討するため、ループ被膜状態を3通りに変化させて、100MHz帯における 0.074mol/l 濃度食塩水内における同ループアンテナ間の伝送係数 S21 および送信ループアンテナ係数の距離特性の測定を実施した。その結果、被膜の有無が距離特性に影響を及ぼさないことを確認できた。(3) 送信アンテナ係数推定に係る不確かさ評価を実施し、不平衡電流の寄与が大きくない限り、合成拡張不確かさで3%以内に収まることを確認した。
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