研究課題/領域番号 |
19K04390
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐々木 重信 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20242399)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エネルギーハーベスティング / センサネットワーク / リレー伝送 / エネルギー収支 |
研究実績の概要 |
本研究では異種の無線センサネットワーク(WSN)が混在する状況で、RFエネルギーハーベスティング (RF-EH)機能を無線端末に備えることで周辺の無線端末の電波からエネルギーを獲得し、WSNにおける情報伝送の信頼性と動作寿命の両立を狙いとした。そのためのWSNにおけるエネルギー収支および回線収支解析の理論的基盤の構築を目標とし、以下の研究成果を得た。 (1) 多数の端末が存在する状況で周囲の複数のエネルギー源とみなせる無線端末(ES)の電波からセンサ端末(ST)へ有効なRF-EH が行える範囲を、エネルギー獲得閾値を考慮したエネルギー収支の評価を通して明らかにした。STから中継端末(RT)への伝送パケット廃棄により起こる再送のために生じる付加的なエネルギー消費も考慮した。異なる距離にあるES からのRF-EH を考慮した場合の運用持続時間を求め、最も近いESの距離と、より遠い距離にあるESとの距離比に対するRF-EH の有効範囲を明らかにした。 (2) Detcted and Forward(DetF)による複数の中継端末を切り替えるリレー伝送を想定し、中継端末のバッテリー残量によりリレー伝送を行う中継局を切り替え、それ以外の中継端末でRF-EHを行う手法について、干渉源となる無線端末の存在が通信面とRF-EHの面で中継端末に与える影響に関する理論モデルを構築した。構築したモデルを元に中継局と干渉端末の距離に対するOutage確率と持続時間の評価を通してその影響を明らかにした。 (3) センサ端末(ST)から中継端末(RT)への伝送について、前年度の成果を元にキャリアセンスを用いたCSMA/CAプロトコルを加え、RF-EHを考慮した場合のST端末数に対する各種プロトコルの運用持続時間の評価を行い、CSMA/CAプロトコルの優位性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響等により、 (1)複数のエネルギー源となる無線端末からのRF-EHの効果について、ランダムアクセスを考慮した評価に遅延が生じた。 (2)複数の中継端末によるリレー伝送の特性評価において、干渉端末の影響を特に通信面で改善する手法の構築が必要となった。 点で進捗に若干の遅れと追加で検討が必要となった事項が生じた。これらの検討を進めるとともに、現在得られている成果を取りまとめ次第次年度に発表する予 定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をもとに、複数のセンサ端末(送信端末)、複数の中継端末によるモデルへの拡張を引き続き進める。特にエネルギー源となる他の無線端末からの到来電波がランダムかつ間欠的な場合の検討が若干遅れているため、この点の検討を進める。また通信における干渉の影響とRF-EHにおけるエネルギー獲得による長寿命化への貢献の条件を明らかにしたところ、特に通信における干渉の影響の改善が全体の性能向上に不可欠なことがわかった。この点を複数アンテナによるビームフォーミング等の活用により改善する追加検討を行う予定である。この追加検討を踏まえた回線収支およびエネルギー収支モデルを構築する。 あわせて本年度の成果で発表準備中のものを含めて成果を取りまとめ、論文発表等を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、発表等で参加を予定していた学会が全てオンライン開催になったため、旅費の支出がなかった。一部を物品購入に当てたが結果として次年度の使用額が生じた。 次年度使用額については、研究期間を延長したこととあわせ、主に成果発表のための旅費及び学会参加費、論文投稿費用に当てる計画である。
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