| 研究課題/領域番号 |
19K04394
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| 研究機関 | 広島市立大学 |
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研究代表者 |
藤坂 尚登 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30305784)
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| 研究分担者 |
桑田 精一 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (80275403)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | テラヘルツ波 / 量子力学系 / 量子ドット結合系 |
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| 研究実績の概要 |
本研究はテラヘルツ(THz)帯域無線通信系の小型・低電力化や受信機の高感度化を目指して，通信系を量 子系として構成し，加えて，大容量通信を可能とする時空間コーディングを導入するための基盤を築くことを目的とする．研究は大きく分けると，[1]量子ドット結合系のモデリング，[2]量子ドット結合系の設計，[3]時空コーディングの考案の3項目から成る．2020年度の実績は次のとおりである．
[1]において，2019年度のモデルを改良するために電子のスピンを考慮し，より現実の物理系に近いモデル化を行った．この成果は，国内研究会と国際会議において発表した．従来の量子系の非線形確率常微分方程式によるモデル化にはスピンが考慮されておらず，この成果の新規性は高い．
[2]において，2019年度の成果を統合し，グラフェン(組成)に磁界(対称ゲージ)を印加してポテンシャル系を構成し，[1]において構築した理論を基に解析した．学術誌にこの成果を公表した．グラフェンの電子の運動はディラック方程式により記述されるが，このような運動を非線形確率常微分方程式でモデル化した従来研究はなく，この成果の新規性も高い．
[3]において，2019年度の成果を，送信データが反映された直交性のある空間符号を搬送するための共鳴トンネルダイオード応用結合発振器に発展させた．また，シンボルレベルの誤り訂正を理論化した．これらの成果は，国内研究会と国際会議において発表した．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績の概要に記した項目[1]はほぼ2019年度に完了している．[2][3]に関しての成果は研究実績の概要に述べたとおりである．
しかし，研究代表者と分担者は所属機関の業務に新型コロナウイルス感染症対策を施すために多大な時間を費やしたため，[2]に関しては，ポテンシャル系を結合系へ展開したときの電子状態の振動パターンの自己組織化による復号機能を十分に確認できなかった．また，[3]に関しては，その評価のために[2]と並行して進める予定の照射THz波モデルの作成に不十分な点が多い．
これら復号機能確認と照射THz波モデリングの未完により，2020年度の進捗は当初予定の60%程度でり，区分のような評価(遅れている)とした．
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| 今後の研究の推進方策 |
今後も交付申請書に記載した「補助事業期間中の研究実施計画(以下，計画書)」に従って研究を進める．
上述の通り，2020年度までに計画書の[1]はほぼ完了した．計画書の[2]の[2-a]通信信号とそれを受信する量子ドット結合系のパラメータに対する量子ドット結合系の振るまいの解析については，[1]の成果を基にほぼ満足できる結果を2020年度までに得ているが．[2-b]電子状態の振動パターンの自己組織化による復号機能確認は不十分である．計画書の[3]については，2020年度に時空符号化されたTHz波の生成シミュレーションを実施したが，受信側に到達したTHz波(照射THz波)のモデリングは不十分であるため，時空符号化・復号化方式を評価する準備ができていない．
2021年度はこの符号化・復号化方式の品質を評価することがゴールであるが，そこに効率的に到達する必要がある．その手段として，上記[2-b]を網羅的でなく，候補の符号化・復号化方式やシミュレーション条件を絞って実施する．これにより，[3]の照射THz波モデルのパラメータも削減できるので，そのモデリングに要する時間を短縮する．また，2020年度に予定していた計画が実施できなかったことにより支出しなかった人件費や新型コロナウイルス感染症拡大により支出しなかった旅費を2021年度に研究補助員の増員やアクセラレーターによるコンピュータの性能向上に充てることによって，ゴールへの到達に要する時間を短縮する．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
［理由］(1)「現在までの進捗状況」に述べたような遅れにより，コンピューター援用解析が行えず，それに従事する予定の研究補助員を雇用しなかった．(2)新型コロナウイルス感染拡大に伴い国内研究会や国際会議がオンライン開催となり，旅費のための支出が不要であったため．予定額の75％の支出にとどまり，25%の繰越となった．
［使用計画］研究の進捗の遅れを取り戻すために，繰越分を研究補助員の増員やアクセラレーターによるコンピュータの性能向上に活用する．
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