本研究はテラヘルツ(THz)帯域無線通信系の小型・低電力化や受信機の高感度化を目指して,通信系を量子系として構成し,加えて,大容量通信を可能とする時空間コーディングを導入するための基盤を築くことを目的とする.研究は大きく分けると,[1]量子ドット結合系のモデリング,[2]量子ドット結合系の設計, [3]時空コーディングの考案の3項目から成る. 2022年度の実績は 次のとおりである. GaAs系材料を用いた結合量子ドットに対して,軌道角運動量(OAM: quantum angular momentum)変調されたテラヘルツ帯電磁波が照射されたときの応答およびその速度を,OAMモードと変調指数等をパラメータとして,シミュレーションにより求めた.その結果,応答はパラメータに依存するが,10ps程度の時間を経て確認できた.これによって,[2]を完了とする.この成果は,国際会議において公表した.2021年度までに円環結合量子ドットを用いて多重OAM波を各モードのOAM波に分離できることをシミュレーションにより確認した.各モードのOAM波がQAM(: quadrature amplitude modulation)変調またはOFDM(: orthogonal frequency division multiplexing)+QAM変調されているときの復調法を新規に確立した.これによって,[3]を完了とする.この成果を学術論文に投稿する準備を進めている. [1]に関しては2020年度に完了している.[2]に関しては,グラフェンに加えて,GaAs系材料を検討し,2020-2022年度に成果を得た.また,[3]に関しては,2019年度から変復調に取り組み,上記のようにOAM+QAM,または,OAM+OFDM+QAMの復調のシミュレーションを2022年度に実施し,成果を得た.以上より,本研究の目的は達せられた.
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