研究課題/領域番号 |
19K04396
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
眞田 幸俊 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90293042)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 超多素子アンテナ / 分散アンテナ / ターボ復調 |
研究実績の概要 |
第5世代移動通信システムでは多数のデバイスからの情報を収容し,従来とは違ったアプリケーションのプラットフォームになることが期待されている.基地局では超多素子アンテナを実装し,同時に100以上の信号を受信,復調することが必要である.従来の復調アルゴリズムでは計算量的に同時受信することができる信号数が10程度に限られる.そこで本研究ではマルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて100を超える信号を同時に受信し復調するアルゴリズムを検討する.提案アルゴリズムは確率分布の期待値を簡易的に求める手法であるが,これを信号復調に適用する.具体的には(1)提案アルゴリズムによる計算量の削減,(2)想定するチャネルモデルによる復調特性の評価,(3)誤り訂正符号と組み合わせた提案アルゴリズムの特性評価を計算機シミュレーションにより評価する. 2019年度の研究成果として(1)に関してはマルコフ連鎖モンテカルロ法に並列信号処理を用いた方式を提案した.複数の受信信号間は相互依存しているが,これを無視し並列に処理することにより単位時間当たりの復調回数を増加し,受信特性を改善する.計算機シミュレーションの結果並列数が3のとき最も良い特性を示した.またアルゴリズムが特定のローカルミニマムに停留した場合に強制的に移動させる式も提案した.さらに(3)については1回目の多信号復調のみ受信信号を用いるが,2回目以降誤り訂正後の繰り返し復調に関してはマルコフ連鎖モンテカルロ法の出力のみを用いる方式を提案した.これにより受信信号を用いた復調処理部分の計算量を削減し,従来方式と同等の誤り率を達成できた. またマルコフ連鎖モンテカルロ法を超多素子アンテナの別の形態である分散アンテナに用い,ユーザに対するアンテナと周波数リソース割り当て最適化も検討し,少ない計算量で最適手法に近い周波数利用効率を実現できることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では(1)提案アルゴリズムによる計算量の削減,(2)想定するチャネルモデルによる復調特性の評価,(3)誤り訂正符号と組み合わせた提案アルゴリズムの特性評価を検討項目に挙げた.このうち(1)および(3)に関しては想定通りの計算量削減効果を得られた.これに対して(2)に関しては,受信アンテナ間の相関のあるチャネル応答を想定したマルコフ連鎖モンテカルロ法による受信信号の復調を試みたが,想定以上に特性が劣化した.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画(2)想定するチャネルモデルによる復調特性の評価に関して,2020年度においては格子基底縮小を用いてアンテナ間の相関を低減し,マルコフ連鎖モンテカルロ法を適用することを検討する.この組み合わせによる復調方式はすでに提案されているが本研究では特に並列信号処理を用いて等価的にマルコフ連鎖モンテカルロ法の繰り返し処理回数を増加した場合の特性について検討する予定である.また通信路応答の大小により受信アンテナをグループ化し,それぞれのグループに対して個別の拡張係数を適応することによる効果を検討する.さらにマルコフ連鎖モンテカルロ法をチャネル推定にも適用し信号復調と同時にチャネル推定精度を改善する方法を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症のため学会が中止になり,旅費を使用しなかったため.当該予算は国内(岡山大)で2020年度に開催される国際会議における研究成果発表に用いる予定.
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