研究課題/領域番号 |
19K04397
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
二見 史生 玉川大学, 量子情報科学研究所, 教授 (20417695)
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研究分担者 |
谷澤 健 玉川大学, 量子情報科学研究所, 准教授 (10709489)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セキュア通信 / 物理暗号 / 光無線 |
研究実績の概要 |
本研究は、雑音によるマスキング効果を利用して高い安全性を実現する物理暗号を光無線通信に適用し、高い安全性と低遅延性を両立するセキュア光無線通信方式を検証することを目的としている。検証に向け、光ファイバと空間を相互変換する全光型アンテナ、安全性向上・低遅延性、セキュア光無線通信方式の三つを課題設定した。全光型アンテナは電子回路を介在せずに光のまま変換することを特徴とする光アンテナで、広帯域性、低遅延性、プロトコル無依存性など光通信の特徴を活用できる。昨年度は、全光型アンテナの研究を実施し、二つの全光型アンテナを対向に設置した構成の評価系を構築した。 今年度は、まずこの評価系をもちいて鍵を有する正規受信者のビット誤り率を測定し、誤りなく暗号通信を行えることを実証した。実証実験では、256ビットの鍵をもとに生成した多値数が4096値の暗号信号(強度変調、変調速度1.5Gb/s)をもちいた。次に、この暗号信号の安全性評価を実施した。直接検波方式で多値信号を受光し、雑音にマスクされている多値信号数を表す安全性指標の一つである雑音マスキング量を測定した。雑音マスキング量は190と大きく、これにより鍵の推定成功確率が10-55と小さいことが示せ、本暗号信号が高い安全性を実現していることを検証した。一方、暗号化しない場合は、空間通信であっても第三者が信号光の一部をタップして信号を盗み読めることも実証した。最後に、対向させた全光型アンテナを30メートル離れた場所に設置し、セキュア光無線通信を実施した。リアルタイム暗号通信でビット誤り率が10-9を下回るセキュア通信実験に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究課題として挙げた、データレート1.5Gb/s、信号多値数4096の物理暗号をもちいて暗号通信の実証および安全性評価を実施した。当初計画では、低遅延性およびプロトコル無依存性の実証に取り組む予定だったが、翌年度の研究課題のセキュア光無線通信実験を先に実施する方が効率的に本研究を推進できることが分かったため、セキュア光無線通信実験を行った。今年度実施予定だった課題は、来年度実施する。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本研究の最終年度で、研究実施計画で未実施の二つの課題に取り組み、本研究を完了する。一つ目の課題はプロトコル無依存性で、今年度は暗号データに擬似乱数をもちいたが、他のフォーマットの暗号データをもちいる。二つ目の課題の低遅延性で、暗号化・復号化に要する時間の実験計測を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度予定していたセキュア光無線通信実験を今年度実施し研究の効率化を図った。一方、今年度の計画していたプロトコル無依存性および低遅延性の評価は来年度に先送りした。これらの変更により、差額が生じた。生じた差額は、来年度に先送りした評価実験に利用する。
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