研究課題/領域番号 |
19K04408
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小澤 賢司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30204192)
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研究分担者 |
渡辺 貫治 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (20452998)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (60332524)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 音源分離 / 雑音抑圧 / マイクロホンアレイ / 時空間スペクトル / ニューラルネットワーク / 特異点 / フェーズドアレイ / 時空間音圧分布画像 |
研究実績の概要 |
本研究では,スマートフォンに搭載可能な程度の小規模マイクロホンアレイにより,高精度な目的音抽出の実現を目指している。その基本戦略として,アレイ出力を画像と見なした場合に,その時空間スペクトルにおいては音源位置が特異点となることを利用する。特に,方向が同一で距離のみが異なる複数音源からの抽出を可能とすることに意義があると考えている。 2019年度は,4個のマイクロホンを約6 cmの円弧上に配置したアレイを想定し,同一方向に3音源がある場合に,そのうちの1音源からの音を抽出することを検討した。まず,問題を定式化し,原理的にはそれに基づいた連立方程式を解くことで音の抽出が実現できることを示した。しかし,実際には連立1次方程式の係数行列が悪条件となるため,求解が困難である場合があることが判明した。その場合には近似解法を用いることも提案したが,目的音源以外の音源(雑音源)からの音の低減量は20 dB程度に留まり,改善の余地があることが示唆された。以上の成果をIEEE GCCE2019および日本音響学会2020春季研究発表会で報告した。 改善方法として,非線形連立方程式をニューラルネットワークにより解くことを考えた。まずは,直線上に配置したアレイに平面波が到来するという最も基本的な場合を取り上げ検討を行った。その第一歩として,問題の定式化を行った成果をICSAI2019で報告した。その後,ニューラルネットワークによる解法に取り組み,雑音源が1個の場合と複数の場合について検討した。その成果は2020年中に学会発表する予定である。 さらに,円弧状アレイの機能を,直線状アレイとフェーズドアレイ技術によって実現したうえで,焦点に摂動を与えることがスペクトルの変化に及ぼす影響に関しての検討に,計算機シミュレーションによって着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画どおりに研究は進捗している。なお,「研究実績の概要」に記したとおり,原理的には連立方程式の求解で解決する問題であることを定式化したが,現実的には係数行列が悪条件であるため万全な解は得られなかった。しかし,今後により一般的な音響環境での動作を考えれば,連立方程式による求解には限界が見えることが容易に予想されるので,この時点でニューラルネットワークを用いた解法に踏み出せたことは,むしろ研究の発展のためにはよいことであったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,2019年度に直線状アレイと平面波を用いて検討したニューラルネットワークによる解法を,円弧状アレイと球面波に拡張して検討する。これにより,同一直線上に存在する複数音源の分離を目指す。 また円弧状アレイにおいて,フェーズドアレイの技術によって焦点を摂動させることの影響を追求していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19コロナ禍のため,2020年3月に参加を予定していた日本音響学会春季研究発表会が中止となった。また,同月に予定していた代表者・分担者による集中討論会も中止となった。そのため,それらに予定していた旅費を次年度使用額として計上した。 2020年度には,その資金を改めて学会発表および代表者・分担者による集中討論会旅費に利用したいと考えている。しかし,2020年5月時点では,今後の学会開催の有無および外出自粛の終了時期を予測するのは困難であるため,その使用方法も確定はできない状況である。
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