研究課題/領域番号 |
19K04413
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
澤野 宏 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (40514295)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管計測 / 血管厚さ / レーザースペックル / 多波長計測 / 血流 |
研究実績の概要 |
血流は大切な生体情報であり,非侵襲で高精度な血流の計測は重要な役割を持っている.出力が小さく,透過性を持つ赤外レーザを照射することにより,人体に負荷をかけることなく血流の速度を計測することが可能である.血管の厚さを計測することが可能になれば,血管の閉塞などの情報を得ることができ,より詳細な生体情報が入手できる.本研究は,複数の波長のレーザースペックル情報から血管厚さと血流速さの情報を分離することにより,血管厚さと血流速さの同時計測を可能とする計測方法の実現を目的としている. 初年度である2019年度は血管を模した流路を持つ血管厚さ計測原理評価実験装置を製作し,流動層厚さおよび流速とスペックルの時間変化との関係を計測することにより,レーザースペックルによる流動層厚さと流速の同時推定の可能性を調べた. 本研究では,生体を模擬する試料として,厚さの異なる流路を設けたポリエチレン製の試料を製作した.ポンプを用いて流速を調整して試料に流体を流した状態で,光源から試料に対してレーザー光を照射し,試料で散乱されたレーザー光をCCDカメラにより測定した. 波長420nmのレーザーおよび波長780nmのレーザーを用いて流速および流動層厚さとレーザースペックル変化との関係を調べた.短波長(420nm)のレーザースペックルでは流動層厚さの影響をほとんど受けず,流速と変化ピクセル数の関係は若干のばらつきはあるものの,線形に近い関係が得られた.一方,長波長(780nm)のレーザースペックルでは流速,流動層厚さの双方の影響を受けて変化ピクセル数に大きな変化が見られた. 以上の結果から,レーザの波長により流動層厚さがスペックル変化に与える影響に違いが出ており,複数波長のレーザースペックルによる流動層厚さと流速の同時推定の可能性があることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2019年度から2021年度の3年計画で研究を遂行しており.2019年度は「レーザ波長と血管厚さの関係の解析」および「血管厚さおよび血流速さとレーザースペックルから得られる特性値の関係の解析」,2020年度は「多波長レーザースペックルによる血管厚さと血流速さの同時計測方法の策定」および「波長可変レーザを用いた血管情報計測プローブの試作」,2021年度は「手の血管を対象とした血流計測実験」を計画している. 2019年度は流動層厚さおよび流速とスペックルの時間変化との関係を計測し,複数波長のレーザースペックルによる流動層厚さと流速の同時推定の可能性があることを明らかにした.2019年度の計画である「レーザ波長と血管厚さの関係の解析」および「血管厚さおよび血流速さとレーザースペックルから得られる特性値の関係の解析」を達成していることから,本研究はおおむね順調に進展していると言うことができる.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は計画通り研究が進捗した. そこで,当初の計画通り,2020年度は「多波長レーザースペックルによる血管厚さと血流速さの同時計測方法の策定」および「波長可変レーザを用いた血管情報計測プローブの試作」,2021年度は「手の血管を対象とした血流計測実験」を進める. 2020年度は2019年度の実験結果を整理,解析し,複数波長のレーザースペックルの特性値から血管厚さと血流速さの情報を分離する方法を策定する.また,多波長レーザースペックルによる血管厚さと血流速さの同時計測実験を行い,提案する多波長レーザースペックルによる血管厚さと血流速さの同時計測の有用性を明らかにする.さらに,コンパクトレーザ光源を用いて光源とCCDから構成される血管情報計測プローブを試作する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度の研究において,実験装置を製作するための物品費900,000円,論文掲載と学会発表のための費用100,000円,ならびに間接費用300,000円を使用する予定だった.このうち,論文投稿と学会発表が令和2年度にずれこんだことから,論文掲載と学会発表のための費用100,000円が令和2年度に持ち越しとなった.また,実験装置を製作するにあたり,令和元年度はレーザスペックルによる血管厚さと血流速さの同時計測の可能性検討に注力したため,計測対象となる試料の製作を一部令和2年度に持ち越すことにした.これにより物品費に次年度使用額が生じた. 次年度使用額については,令和元年度から持ち越しとなった,論文掲載と学会発表のための費用,ならびに計測対象となる一部の試料の製作費に充当する.
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