血流は大切な生体情報であり,非侵襲で高精度な血流の計測は重要な役割を持っている.出力が小さく,透過性を持つ赤外レーザを照射することにより,人体に負荷をかけることなく血流の速度を計測することが可能である.血管の厚さを計測することが可能になれば,血管の閉塞などの情報を得ることができ,より詳細な生体情報が入手できる.本研究は,複数の波長のレーザースペックル情報から血管厚さと血流速さの情報を分離することにより,血管厚さと血流速さの同時計測を可能とする計測方法の実現を目的としている. 初年度である2019年度は流動層厚さおよび流速とスペックルの時間変化との関係を計測し,複数波長のレーザースペックルによる流動層厚さと流速の同時推定の可能性があることを明らかにした.また,2年目である2020年度は実験データを整理,解析し,複数波長のレーザースペックルの特性値から血管厚さと血流速さの情報を分離する方法を提案した.また,多波長レーザースペックルによる血管厚さと血流速さの同時計測実験の結果,流速と流動層厚さともに実測値と推定値の間に正の相関が得られることを明らかにした. 2019年度と2020年度の実験では提案する計測方法の原理検証に主眼をおいており,420nmと780nmと波長の大きく異なるレーザーを用いていた.しかしながら,420nmのような短波長のレーザーはエネルギーが大きく日常的に皮膚に照射するには適さない問題を有していた.そこで,2021年度は2つの波長の赤外レーザースペックルを用いて血管厚さと血流速さの情報を分離する方法の提案と血管厚さと血流速さの同時計測実験を行い,2つの波長の赤外レーザースペックルにより血管厚さと血流速さの同時計測が可能となることを明らかにした.
|