研究課題/領域番号 |
19K04417
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研究機関 | 秋田県産業技術センター |
研究代表者 |
黒澤 孝裕 秋田県産業技術センター, 先端機能素子開発部, 上席研究員 (60370243)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電界計測 / 変調散乱 / 光変調 / 光走査 / 半導体散乱体 |
研究実績の概要 |
光走査式変調散乱波測定システムについて,マイクロ波帯での周波数特性を測定するとともに誤差要因を把握し,定量性の向上を図った.散乱体-信号受信アンテナの相対位置が信号強度に及ぼす影響を検討するため,変調散乱波強度の周波数特性および散乱角依存性を数値計算で検討するとともに,その他の誤差要因を実験的に検討した. 数値計算による変調散乱波強度の評価にはFDTD法を用いた.解析空間は94mm角の立方体とし,PML吸収境界を各面外周に設けた.原点に直径25mmの散乱体円板を配置し,直線偏波の平面電磁波を円板面に垂直に照射した.散乱電磁波を近傍-遠方変換により遠方電磁界に変換し,信号受信アンテナで計測される散乱波を求めた.光照射による散乱体の抵抗率変化を模擬するため,散乱体全体の抵抗率を変化させた際の散乱波強度の差分から変調散乱波成分を評価した.周波数1 GHz-18 GHzで散乱波強度の周波数依存性を計算した結果,前方変調散乱波強度は実測とおおむね一致し,実験条件を再現できた.測定機器配置が信号強度に及ぼす影響を検討するため,変調散乱波の指向性を求めた.E面指向性は8の字特性を示し,高周波数において指向性が鋭くなる.一方H面指向性は,低周波で等方,高い周波数ではサイドローブが主放射方向となった.いずれの場合も散乱角が0-10度の範囲では変調散乱波強度の変化は10%以下となり,散乱体-信号受信アンテナの相対位置が信号強度に及ぼす影響は小さいことが判った. その他の誤差要因については,周囲環境による変調散乱波の反射や電気的,機械的なドリフトが挙げられる.実測時にこれらの誤差要因を低減することで繰返し測定誤差を低減し,振幅変動について±2σで7.6%の再現性を達成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構築したシステムを用い,1 GHz-18 GHzのマイクロ波帯における周波数特性を実測評価するとともに,数値計算結果と比較することによって誤差要因について検討出来ている.今回構築した光走査によって電磁界分布を計測するシステムでは,測定位置と受信アンテナとの相対的位置関係が光走査に伴って変化する.これに伴う散乱角の変化の影響を数値計算により検討し,測定系の相対位置による変調散乱波の伝播経路の伝達関数を求めることができた.これにより,変調散乱波の指向性特性が得られ,計測システムの相対的位置関係が信号強度に及ぼす影響を明らかにした. これらの研究実績は研究実施計画に沿っており,研究は概ね予定通りに進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に沿って進める. 感度や位相の校正法について引続き検討する.マイクロストリップラインのような代表的な既知の近傍界波源について数値計算により検討し,近傍界の振幅・位相と遠方で観測される変調散乱波の振幅・位相の関係を明らかにする.この結果と実測結果に基づいて,有効な校正法を見出したい. 次に,電界分布計測時の擾乱性を評価する.種々の厚さや形状の散乱体を用い,高周波を給電した平面回路やアンテナの分布計測の際に被測定物の入力インピーダンスや反射波電力を合わせて評価し,散乱波出力と擾乱性の関係を明らかにする.この結果を基に,低擾乱な計測に向けた指針を示したい. 最後に,マイクロ波帯の通信用アンテナや高周波平面回路近傍の振幅・位相分布測定による評価や,市販電子機器が動作する際に放射される電磁波の分布測定による不要輻射の波源特定を行い,提案手法の実用性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,主に研究会・学会が新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンライン開催となり,未使用の旅費が発生したためである.次年度研究費は消耗品,旅費,その他に使用し,設備備品の導入予定はない. 消耗品は1,000千円を予定している.内訳は半導体基板400千円,光学・電子部品550千円,論文別刷り50千円である.半導体基板は材料検討に用いる.光学・電子部品は測定システム改良および研究機器の自作に使用する.国内旅費は300千円を予定しており,内訳は研究成果の学会発表2件,研究会発表2件である.その他は240千円を予定し,査読論文投稿1件および学会参加負担金である.
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