本研究では、微弱なテラヘルツ波パワーを正確に測定するために大きな課題となっていたセンサのドリフト抑制のための評価技術を開発し、ドリフトの主たる要因を明らかにした。テラヘルツ波パワーの絶対値を定めるためには、カロリーメータによる標準器の開発が不可欠である。そのため、昨年度に検証を行ったカロリーメータのコンプリメンタリ補償回路のプロトタイプを作成し、カロリーメータに実装することで安定なテラヘルツパワー標準器を実現した。また、標準器からの値付け、すなわち校正を行ってより簡便に利用できる仲介用の実用標準器の検討を進めた。校正の妥当性を検証するためには、異なる標準器による比較が重要である。本研究では、空間ビーム型のカロリーメータの開発を進めてきたが、既存の導波管型カロリーメータとの比較検証を行うことを目的にセンサ構造の検討を進めた。一般に入手できるパワーセンサでは、空間ビームと導波管の双方に対応できる仲介器を実現することが困難である。導波管プローブを変換器として利用するセンサ構造を検討し、基本設計を行ったが、空間ビームと導波管における変換効率等を正確に評価する点に課題が残った。しかしながら、本研究では、1.微弱テラヘルツパワー標準器としてのカロリーメータの性能向上、2.校正の不確かさに影響する評価技術の開発に成功し、これまで確立していない微弱なテラヘルツ波パワーの校正技術開発を大いに進展することができた。
|