フィルム状の静電容量型非接触人感センサをより高感度なセンサシステムにすべく、非接触人感センサ部(C)に対してチップインダクタ(L)やチップ抵抗(R)を付した並列共振型センサシート技術の開発を推進した。前年度までに目途がついた粘着実装技術を用いることで、数MHz付近に鋭い共振ピークを持つ人感センサシート構造を成功裏に構築した。 一方、インピーダンスの値を複素空間に展開した際に見られると予想した特異的な空間形状は確認されなかった。以前この現象が見られた際の周波数はGHzオーダーであり、波長で言えば1~10cmほどの範囲になる。ちょうどセンサと物質間の距離が電磁波の波長と同じスケールとなることから、そのような条件下においてのみこのような特異的な現象が見られたものと推測している。一方、今回の共振周波数はMHzオーダーで波長に換算すると10~100メートルの範囲となる。つまり、近傍界(近接場)での電磁界の変化を捉えていたと考えられ、そのため特異的な複素空間形状は出現しなかったと考えている。 しかしながら、今回のLC共振型センサシート化により、非共振の場合に比して導電物質の接近に伴うインピーダンスの変化が桁で高くなることを実証し、高感度センシングに求められるインダクタ(L)や抵抗(R)の要件も抽出することができた。最終的な脈波の検出実証までには至らなかったが、高性能センサシートとして使用できるポテンシャルを示すことが出来たと考えている。
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