研究課題/領域番号 |
19K04421
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西村 吾朗 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (30218193)
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研究分担者 |
藤井 宏之 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00632580)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蛍光イメージング / 光伝搬 / 生体計測 / 逆問題 / 拡散方程式 / 多重散乱体 |
研究実績の概要 |
生体組織中に埋め込まれた蛍光体の高感度リアルタイム検出のために、2019年度は、時間領域計測における背景除去による高感度化のうち、背景光の蛍光寿命を考慮した計測に関する検討、単純形状を仮定した蛍光体の位置推定に関するアルゴリズムの研究、さらに蛍光拡散を支配する散乱について高濃度散乱体の散乱係数に関する考察を行った。蛍光高感度検出のためにはバックグラウンドの抑制が不可欠であり、それを時間領域の違いより改善できることをこれまでに明らかにしてきたが、蛍光寿命が有限である場合に関して議論ができていなかった。そのため、有限の蛍光寿命を考慮したシミュレーションを行った。特に、バックグラウンドの生成が目的とする蛍光体と同じ、すなわち非特異的なバックグラウンド光の場合を問題とした。有限の蛍光寿命の結果は、単純に時間領域を選択する方法ではバックグラウンド除去の効率が悪く、時間分解のメリットがあまりなかった。そのため時間応答の形状の違いなどを考慮した分離を考える必要があることがわかった。この結果は、日本光学会年会OPJ2019にて発表した。さらに、より高速に蛍光体の場所を特定するために、単純な形状を用いパラメータを大幅に減らすことによる改善を試みた(中国東南大学などとの共同研究)。実際には、直方体が半無限領域の境界に平行に存在することを仮定することにより、その位置、大きさを推定することを行った。その結果、3段階に分け、初期値の範囲を限定していくことにより効率的に推定できることを理論的に明らかにし、それをファントム実験に当てはめ有効性を確かめた。結果は、C.Sun et.al. JOSAA vol37(2020)にて論文発表した。さらに、研究分担者と共に蛍光体が埋め込まれた散乱体の散乱特性の濃度依存性を調べ、それが直線的ではないことを確かめOPJ2019やANS2020という会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単純形状の蛍光体位置同定に関して、そのコンセプトを実証し研究論文として報告した点が一番大きな成果である。一方、実験的な装置に関しての改良については、理論的な研究を優先させたため、本年度ではあまり進展しなかった。特に、蛍光寿命を考慮したシミュレーションから、装置の時間分解能が問題に成ると予想され、計画したTDCを用いた方法については、進められなかった。一方、理論的な研究に置いては、予定していた共同研究者の年度末招聘がCOVID19により不可能になったことと、それによる共同研究者が自身の地域に隔離されることなどにより、論文発表より先はあまり進められなかった。そのため、やや遅れていると言う判断を行った。
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今後の研究の推進方策 |
まず、単純形状を用いた推定法について、アルゴリズムはまた限定的な条件でのみしか確かめられていない。そのためにより詳しく直方体の配置や、データ取得の位置などに関して議論を行う。また、計算プログラムも高速化が必要であり、本年度はそれを行う。特に前者については、2019年度で得られた解析解を用いてシミュレーションを行い、それに対して逆問題を解くと言う方法で、各種の位置、ファイバ間隔や数などを変えてアルゴリズムを改善する。またプログラム自体もより効率的なものに改善する。それとともに、背景光を組み込んだシミュレーションとそれに対する逆問題も試みる。TDCを用いた装置は一端中止し、現在所有する装置において、検出プローブに位置検出機能を付け、実験者が手で持ってサンプル表面をスキャンしながら時間応答データと場所とを同時に測定できる装置を試作する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19のために、年度末の研究者招聘が出来なかった。また、予定していた国際会議の開催が2021年度となったためそのレジストレーションが支出されなかった。これらのために、計画してた支出より大幅に少ないものとなった。今年度は、年度後半にそれらの招聘、学会発表などを計画する。また、位置検出などための実験装置の組み立てに必要な消耗品を計画する。
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