散乱体に埋め込まれた蛍光体に関して、蛍光体を点と仮定した解析解について研究を進めた。蛍光の時間応答関数は、励起光の伝搬による時間応答と蛍光を発して観測点に至るまでの時間応答の畳み込み積分で表される。この解を無次元化し、時間0付近についての厳密な解の形を計算した。その結果を用い、位置を特定する逆問題で最小必要なデータ点数に関して議論し、投稿論文としてまとめた。時間応答関数が最大となる時間(ピークタイム)の解析と合わせ、蛍光の時間応答関数の基礎的な性質を明らかにした。位置の高感度検出における解析法の指針となる。 検出方向を変えた散乱光の時間応答関数に関して、モンテカルロ法による数値実験と解析解を評価し、定量的な議論を行った。その結果、流れの項の考慮が必要で、入射点と検出方向を含む面内の成分が残り角度を変えた場合にはそれにより時間応答関数が説明できることがわかった。同様な議論は埋め込まれた蛍光体からの蛍光についてもあてはまるはずであり、検出方向を変えることにより深さ方向の情報量を増やしより深さ方向により厳密な再構成が可能であると示唆される。 極めて濃い散乱体中での散乱体濃度に対する散乱係数の非線形な振る舞いについての波長依存性を議論した。単分散と仮定し濃度に関して静的構造因子を1次まで展開した解析的な表現を与え、実験結果が定性的に説明できることを示した。特に、非線形性のオリジンが、排除体積効果であることが示された。また、このことにより、波長依存性を解析的に議論することが可能となった。 1000nmを越える波長域(SWIR)のICG蛍光がイメージング解像度を向上すると言う議論に対し、深部蛍光体の検出も改善するのかに関して計測した。ICGの蛍光は長波長になるに従い大きく減衰し、像の改善ははっきりとは観測できなかった。多重散乱が主体的な場合には顕著な改善にはつながらないことが示唆される。
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