研究課題/領域番号 |
19K04422
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
高橋 貞幸 山形大学, 学内共同利用施設等, 技術員 (10396559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 圧電高分子材料 / P(VDF/TrFE) / 超音波トランスデューサ / 音響整合層 / 集積回路 / 透過画像 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度までに開発した音響整合層(ポリマー系)を付加したP(VDF/TrFE)(75/25mol%)トランスデューサを用いて、集積回路[Integrated Circuit(IC-11229-12/ROCKWELL)]を観測対象物とし、空中超音波(周波数2MHz)による透過画像(強度画像および位相差画像)を試みた。 P(VDF/TrFE)トランスデューサを用いた駆動ステージは、最大範囲が、X-Y(2次元)方向30×30mmである(IC-11229-12のサイズは24×24mm)。 この結果、このICの厚みは、1.5mmと比較的厚いが、2MHzの超音波は、音響整合層を付加したP(VDF/TrFE)トランスデューサにより透過し、画像形成ができた。特に、IC内部のchip部周辺・chip部を保護しその電極を固定するために周りに設置してある固定テープが、従来と比べて、より確認できる。また、従来から判明している四隅のリード電極のほかに、一部周りの電極も確認することができた。 現在、本実験で用いている、空中超音波送受信回路で発生するノイズを、極力低減させるため、引き続きFFT回路およびFM変調波による、より画質の良い透過画像形成を遂行している。更に、これまでの強度値による透過画像から発展させ、より分解能が向上すると考えられる、位相差画像形成にも着手している。現時点の実験段階では、まだ最適な位相検出周波数は確定していないが、位相差による受信波形を的確に検出し、画像形成を遂行中である(現在、位相検出周波数10MHzと60MHzの2種類で実験中である)。また、音響整合層によるP(VDF/TrFE)トランスデューサの高感度化により、画像形成時間を約1/3に低下することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に開発したポリマー系の音響整合層付加型P(VDF/TrFE)トランスデューサを用いて、観測対象物として引き続き、集積回路の透過画形成を主目的として遂行した(非破壊検査への応用)。 観測対象物の透過画像形成に用いたP(VDF/TrFE)トランスデューサの焦点距離は15mm・開口径は20mm(開口角は83度)である。 従来の音響整合層を付加しないP(VDF/TrFE)トランスデューサによる集積経路(IC-11229-12/ROCKWELL)の透過画像では、トランスデューサの感度不足のため、IC内の各部の部分に、空気の混入があると考えられたが、本年度のトランスデューサ改善の研究により、その部分が固定テープ部であったこと、IC端部の円形の凹部であったことなどが判明した(非破壊検査機器への実用化にさらなる前進)。加えて、本ICの場合は、周波数2MHzに於ける超音波の吸収値が、それぞれの部位でおよそ35~65dBであることなどが詳細に分かった。加えてP(VDF/TrFE)トランスデューサの感度が上昇したことにより、受信感度が上昇し、画像形成時間が従来より短縮された。 本超音波透過画像をより鮮明な画像とするために、従来の強度値による画像形成に、FFT回路を加え検出すべき受信信号を選択した(具体的には、ノイズの低減)。また、高解像度とすべく位相差による画像形成を遂行した。未だ、トランスデューサの開口径(開口角)の問題や駆動システムに問題が残るが、現時点では所期の目的はほぼ達成している。 これらの結果から、本年度の研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展している、判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後(最終年度)の本研究の推進方策として 1.現在作製しているP(VDF/TrFE)圧電膜の厚みは、周波数が2MHzのため、およそ200ミクロンである。この時、P(VDF/TrFE)膜に対して、分極電圧を約20kVの高電圧を印可する必要がある。現時点では、ポーリング終了時に於ける、ネットワークアナライザーのみでのP(VDF/TrFE)圧電膜の性能評価である。このため、さらなるP(VDF/TrFE)圧電膜の性能評価を追加するため、高耐圧用分極システムを設計し製作する(具体的には、圧電膜の分極率を求めるため、常時にヒステリシスカーブを描く)。 2.上述1に加え、MASONの等価回路によるシミュレーションを行い、さらに音響整合層による効率の良いP(VDF/TrFE)トランスデューサを開発する。 3.現時点では透過画像形成中に、伝送回路から入り込むノイズがあり、画質に影響を及ぼす。また、受信回路自体にもノイズが入り込む(特にリアクタンス回路)。このため、最終(次)年度に、この伝送回路と画像形成コンピュータプログラムを改善し、高画質透過画像形成を行うと同時に、音響整合層の影響をより深く解析し、高感度P(VDF/TrFE)トランスデューサのによる非破壊検査装置を開発する予定である。
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