最終年度の研究では、空気中で物質内部の画像を形成するために、圧電高分子材料P(VDF/TrFE)と音響整合材による、更なる高効率P(VDF/TrFE)トランスデューサの開発とその評価を行った(動作中心周波数は2MHz)。観測対象物は、これまでの通り、音響物性値が判明している、Integrated Circuits(IC-11229-12/ROCKWELL)を用いた。 これまでの研究で、P(VDF/TrFE)の圧電面に、音響整合材(ポリエステル材)を付加するとP(VDF/TrFE)圧電体自体の効率(電気機械結合係数=kt値)が低下していた(音響整合層を付加することで、空気との音響インピーダンスマッチングが良くなるため、結果的に、超音波トランスデューサの送受信効率は、上昇することが、本研究から判明している)。ところが、いくつかの音響整合層を付加したP(VDF/TrFE)圧電体には、Phase値の向上が発生することが分かった(Admittance値は低下)。そこで、本圧電体の物性をMasonの等価回路から解析したところ、2.9MHz以下に動作の中心周波数をもつ、P(VDF/TrFE)圧電体は、Phase値の向上が多発することが判明した(本研究で、Phase値を測定する理由は、圧電面積に依存しないことによる)。また、現時点での結果では、kt値の低下は発生せず、付加前のP(VDF/TrFE)圧電体と同じであることも判明した。更に、kt値は、音響整合材の力学的損失(tanδ)が影響することが、実測値と理論値から判明した。今後、音響整合材の物性値や積層方法により、更なるP(VDF/TrFE)トランスデューサの高効率化が可能となる。 最終年度は、従来の振幅強度画像から位相差画像形成を行った。位相検出を従来の60MHzから10MHzに改良したが、強度画像との大きな変化はまだ確認されていない。
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