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2019 年度 実施状況報告書

深層学習を利用したMRI圧縮センシング再構成に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K04423
研究機関宇都宮大学

研究代表者

伊藤 聡志  宇都宮大学, 工学部, 教授 (80261816)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードMRI / 深層学習 / 再構成 / 圧縮センシング / イメージング
研究実績の概要

磁気共鳴現象を利用したMagnetic Resonance Imaging(MRI)の課題の一つに撮像の高速化がある.圧縮センシングは撮像時間を短縮できる有望な方法であるが,得られる画像が自然でない場合があること,また画像再構成に時間を要するという2つの問題がある.そこで,本申請では画像再構成問題に深層学習を導入する新たな方法について検討を行う.
ネットワークの学習には,入力を偽像が重畳した画像とし,偽像のない画像を出力する画像間学習と,MR信号を入力とし,再構成像を出力とする信号-画像間学習がある.令和元年度は,両方法について検討を行った.画像間学習では,スケーリングを行わない方法,および敵対的生成ネットワーク(GAN)の2通りの方法による再構成を行った.スケーリングを行わない方法では,信号の間引き率が大きい場合は,ランダムな間引きよりも規則的な間引きの方が鮮鋭で高いPSNRの画像が得られる特異な性質が明らかになった.GANでは,スケーリングを行わない方法に比べコントラストや細部の再現性に優れる画像が得られることが示された.
信号画像間学習では,交互方向乗数法(ADMM)と反復的ソフト閾値法(ISTA)による再構成を行った.学習には多くの時間を要するが,高品質画像が得られる可能性が示された.また,これまで研究を行ってきた位相拡散フーリエ変換法の信号を利用すると,通常のフーリエ変換法よりも高品質な再構成像が得られる可能性が示された.この方法は,画像の超解像にも応用でき,帯域制限された信号から帯域を越える信号の復元が可能であり.新たな超解像の可能性が示された.
深層学習を利用する方法のいずれも反復的な画像再構成法よりも高品質な画像再構成を可能とし,また,再構成にようする時間は,大幅に短縮化される結果が得られた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ネットワークの学習では,画像間学習と信号-画像間学習の2通りの場合について検討を行った.画像間学習では,さらにスケーリングを行わない方法と敵対的生成ネットワーク(GAN)の2通りの方法を検討した.また,学習に使用する画像データを多くするほど再構成品質が向上することを確認した.スケーリングを行わない方法では,信号の間引き率が大きい場合は,ランダムな間引きよりも規則的な間引きを行う方が鮮鋭で高いPSNRの画像が得られるという圧縮センシングの理論とは異なる性質が明らかになった(映像情報メディア学会研究会で発表を行い,研究奨励賞を受賞).GANでは,スケーリングを行わない方法に比べコントラストや細部の再現性に優れる画像が得られることが示された.スケーリングを行わない方法は,論文を投稿し採択されている(Magnetic Resonance in Medical Sciences),GANは日本医用画像工学会等で研究発表を行っている.
信号-画像間学習では,ADMMを使用する方法とISTAを応用した方法の検討を行った.その結果,学習に要する時間が,画像間学習に比べ長いこと,スパース化関数を使用するが学習により最適化されること,画像間学習よりも高画質が得られる可能性があることなどが明らかになった.また,汎用法であるフーリエ変換法に規則的な位相変調を導入する位相拡散フーリエ変換法の信号をこのネットワークに応用すると,通常のフーリエ変換法に比べて高品質な画像が得られる可能性が示された.深層学習を利用しない場合でも明らかになっていたが,深層学習を利用する場合でも改めて高画質化の可能性が示された.
以上のように,当初の予定をおおむね満足する研究成果が得られており,順調に推移していると考える.

今後の研究の推進方策

画像処理に関する研究は,その殆どが画像を実関数として扱うが,MRIで取得される画像は,実関数画像ではなく,位相を含んだ画像である.位相は人体組織の情報を与えるものであり,また,位相を考慮した画像再構成の方が,精度が高まると考える.そこで,位相を考慮した深層学習再構成が必要となる.一般に画像の輝度値と位相分布の2つの未知数を求めることは,より困難な問題設定となる.このテーマに関して,我々は位相分布の推定を必要としない新たな方法を提案した.この方法は,信号取得法を工夫するものである.提案法の有効性と優位性を検証することが今後の研究課題である.
MRIの撮像を高速化する方法として多くの方法があるが,我々は光の回折を利用した方法の検討を行っている.本方法によれば,2次元的に収集した信号から任意の断面に焦点を合わせた画像を生成できる.この方法では,焦点面の他に焦点面以外の像が重なる問題があった.深層学習を利用することにより焦点面以外の像成分を大きく低減することが期待できる.この全く新しいMRIの高速化法について検討を行うことが課題である.
深層学習の学習品質を決定する要素に評価関数と活性化関数がある.いずれも研究は発展途上であり,新たな方法が創出されている.これらの新たな要素を取り入れ,学習の品質をあげることがかだいである.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルスのまん延により参加を予定していた学会等を欠席した.そのため当初の計画より使用額が減った.

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Compressed Sensing MR Image Reconstruction using Deep Residual Learning in the Image Domain2020

    • 著者名/発表者名
      Shohei OUCHI, Satoshi ITO
    • 雑誌名

      Magnetic Resonance in Medical Scienses

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Compressed Sensing in Magnetic Resonance Imaging Using Non-Randomly Under-Sampled Signal in Cartesian Coordinates2019

    • 著者名/発表者名
      Ryo KAZAMA, Kazuki SEKINE, Satoshi ITO
    • 雑誌名

      IEICE Transaction on Information and Systems

      巻: E102-D ページ: 1851-1859

    • DOI

      10.1587/transinf.2019EDP7016

    • 査読あり
  • [学会発表] 非ランダム信号間引きによるMR圧縮センシングの深層学習再構成2020

    • 著者名/発表者名
      佐藤 祐紀, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第47回日本磁気共鳴医学会大会
  • [学会発表] Deep Scaled Domain Learning for Compressed MRI using Optional Scaling Transform2019

    • 著者名/発表者名
      Satoshi ITO, Kohei SATO
    • 学会等名
      International Society of Magnetic Resonance in Medicine 27th Scientific Meeting(査読有り)
    • 国際学会
  • [学会発表] Super-resolution based on the Signal Extrapolation in Phase scrambling Fourier Transform Imaging using Deep Convolutional Neural Network2019

    • 著者名/発表者名
      Satoshi ITO
    • 学会等名
      International Society of Magnetic Resonance in Medicine 27th Scientific Meeting(査読有り)
    • 国際学会
  • [学会発表] De-Aliasing for Under-sampling in Phase Scrambling Fourier Transform Imaging using Alias-free Reconstruction and Deep Convolutional Neural Network2019

    • 著者名/発表者名
      Satoshi ITO, Tsukasa SAITO
    • 学会等名
      International Society of Magnetic Resonance in Medicine 27th Scientific Meeting(査読有り)
    • 国際学会
  • [学会発表] Deep Learning based Compressed Sensing Image Reconstruction Robust to Phase Variation2019

    • 著者名/発表者名
      Shohei OUCHI, Satoshi ITO
    • 学会等名
      International Society of Magnetic Resonance in Medicine Japanese Chapter Meeting, Chiba, Japan(査読有り)
    • 国際学会
  • [学会発表] 深層学習を利用したMRイメージング2019

    • 著者名/発表者名
      伊藤 聡志
    • 学会等名
      第38回日本医用画像工学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 敵対的生成ネットワークを利用したMR圧縮センシング再構成の基礎検討2019

    • 著者名/発表者名
      大内 翔平, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第38回日本医用画像工学会大会
  • [学会発表] スパース化空間の類似性を利用した単一画像超解像2019

    • 著者名/発表者名
      竹間 康浩, 大内 翔平, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第38回日本医用画像工学会大会
  • [学会発表] 非ランダム間引き収集によるMR圧縮センシングの深層学習再構成2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 佑紀, 風間 椋, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第38回日本医用画像工学会大会
  • [学会発表] MR圧縮センシングにおけるADMM-Netを利用した深層学習再構成の検討2019

    • 著者名/発表者名
      植松 駿, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第38回日本医用画像工学会大会
  • [学会発表] 敵対的生成ネットワークを利用した圧縮センシング再構成2019

    • 著者名/発表者名
      大内 翔平, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第47回日本磁気共鳴医学会大会
  • [学会発表] ADMM-Netを利用したMR圧縮センシング再構成の検討2019

    • 著者名/発表者名
      植松 駿, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第47回日本磁気共鳴医学会大会
  • [学会発表] スパース表現の相似性を利用した単一画像超解像に関する検討2019

    • 著者名/発表者名
      竹間 康浩, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第47回日本磁気共鳴医学会大会
  • [学会発表] 深層学習を利用しMR位相拡散フーリエ法再生像の超解像2019

    • 著者名/発表者名
      若槻 泰廸, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第47回日本磁気共鳴医学会大会
  • [学会発表] 深層学習を利用したMRブラインドノイズ画像のデノイジング2019

    • 著者名/発表者名
      高野 航平, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      第47回日本磁気共鳴医学会大会
  • [学会発表] MR圧縮センシングの深層学習再構成における非ランダム間引き法の検討2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤 佑紀, 伊藤 聡志
    • 学会等名
      映像情報メディア学会 メディア工学研究会
  • [図書] 2020-2021年版 はじめての医用画像ディープラーニング (MRI再構成部分を執筆)2020

    • 著者名/発表者名
      藤田広志監修/編,伊藤聡志ほか
    • 総ページ数
      278
    • 出版者
      オーム社
    • ISBN
      978-4-274-22544-4

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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