研究課題/領域番号 |
19K04427
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小野寺 武 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (50336062)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / 逆オパール / 匂いセンサ / アンモニア |
研究実績の概要 |
初年度は,アンモニアを高感度に検出するために,メソ孔を導入した逆オパール型フォトニック結晶(IOPC)と凝集誘起発光物質の前駆体である2-(4-oxo-3,4-dihydroquinazolin-2-yl(HPQ-Ac)を組み合わせたデバイスを作製した.200,350,500 nm ポリスチレン(PS)ナノ粒子をテンプレートとし,シリカの前駆体であるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いてIOPCを作製した.また,350 nm PSと50 nmポリスチレン粒子を共存させ,メソ孔導入IOPCを作製した(50nm-350IOPC).それぞれのIOPCにHPQ-Acを修飾し,アンモニアと反応させ,蛍光による発光強度の変化率をファイバ分光器を用いて調べた.その結果,HPQ-Acを修飾した200, 350 500 nmのIOPCの中では,350 nm IOPCで最も高い応答が得られた.HPQ-Acを修飾した50nm-350IOPCは,350 nmIOPCよりも高い応答が得られ,50 ppbのアンモニアガスを検知できることがわかった.
IOPC作製時のTEOS溶液量を調整することで,粒子除去後の空隙間距離を制御できることがわかった.空隙間距離の制御により,フォトニックバンドギャップを調整することが可能となった.また,低波長側のバンド端を蛍光色素HPQ-Acの励起波長と一致させることで,蛍光の増強が可能であることがわかった.
PS粒子を用いたフォトニック結晶作製法の応用として,スライドグラスに移流集積法を用いPS粒子を一層で堆積させた.酸素プラズマ処理により,PS粒子の粒子径を削減した後,金をスパッタし,超音波洗浄により粒子を除去し,プラズモニック結晶を得た.250 nm程度のホールが周期的に並んだアレイが簡便に作製できた.ウシ血清アルブミンの濃度に依存した反射率変化が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メソ孔を導入した逆オパール型フォトニック結晶(IOPC)と凝集誘起発光物質の前駆体である2-(4-oxo-3,4-dihydroquinazolin-2-yl(HPQ-Ac)を組み合わせたデバイスによるアンモニアガス検出について,論文にまとめ電気学会E部門誌に投稿中である.
面欠陥導入については,作製条件を検討中である.まず,通常のIOPCを作製するプロセスにおいて,ガラス基板に350 nm PS粒子とTEOSを集積させる.その後,ナノディップコーターを用いて,1層の500 nm PS粒子を体積させる.その後,1層PS粒子上に再度350 nmPS粒子とTEOSを集積させた.その後,電気炉で焼成し,PS粒子の除去とTEOSの固化を行った.基板を切断し,走査型電子顕微鏡で観察したところ,部分的に面欠陥導入が成功していたが,350 nmIOPC層に500 nmの空隙が散見された.350 nmPS粒子体積中に,1層の500 nm PSから脱離したものと考えられ,作製プロセスを見直す必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
IOPC作製時のTEOS溶液量を調整し.空隙間距離を制御し,反射スペクトルのピーク波長,すなわちフォトニックバンドギャップを調整することが可能となった.また,低波長側のバンド端を蛍光色素HPQ-Acの励起波長と一致させることで,蛍光の増強が可能であることがわかっている.2年目は,蛍光色素HPQ-Acの蛍光波長と長波長側のバンド端を一致させ,蛍光強度がどのように変化するかを調べる.
面欠陥導入については,1層PS粒子作製条件を検討する.TEOS溶液を滴下し,PS粒子が焼失しない範囲で,加温しTEOSをある程度固化した後,350 nmPS層を体積する.また,直径比がおよそ1:1.73が最適と考えられ,PS粒子の組み合わせを変更し,作製する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,逆オパール型フォトニック結晶(IOPC)作製における振動の影響を考え,アクティブ除振台の購入を考えていたが,振動の影響をデモ機により評価したが,除振台の効果は認められなかった.そこで,温度や気流の影響を考え,小型の恒温器を購入し,その中でIOPCを作製した.その結果,従来よりも広範囲にきれいなIOPCが作製できた.次年度は,恒温器の買い増しや高精度の恒温器,PS粒子の購入に充てる.
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