研究実績の概要 |
令和2度は,皮膚ガスの一種である酢酸を検出対象とし, 脂肪酸との反応により蛍光を示す蛍光試薬であるADAM(9-アントリルジアゾメタン)と逆オパール型フォトニック結晶(IOPC)と組み合わせたデバイスを作製した.200,350,500 nm ポリスチレン(PS)ナノ粒子をテンプレートとし,シリカの前駆体であるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)を用いてIOPCを作製した.ADAMをIOPCに塗布して酢酸蒸気との反応を確認した. ADAMが酢酸に溶解する事, ADAM溶液の乾燥中に空気中の酢酸と反応を起こすことが判明した. これらの問題点を解決すべく, 酢酸蒸気の濃度を飽和蒸気より低く設定し, 窒素フローにより外気に曝すことなくADAM溶液を乾燥させる手順を踏んだ実験を行った. その結果, 酢酸の検出ができる可能性のある結果が得られた. 一方で, 走査型電子顕微鏡の観察から,同一のIOPCをアセトンによる洗浄を繰り返すことでIOPCの構造に影響を与えることが確認された. 面欠陥導入については,通常のIOPCを作製するプロセスにおいて,ガラス基板に350 nm PS粒子とTEOSを集積させ,ナノディップコーターを用いて,1層の500 nm PS粒子を体積させ,1層PS粒子上に再度350 nmPS粒子とTEOSを集積させた.その後,電気炉で焼成し,PS粒子の除去とTEOSの固化を行った.連続した空隙をもつ多孔質結晶の作製に成功し, 面欠陥となる層を形成することにも成功した. ただし, 上部層には下部層と比べ規則性が乱れた部分がみられ,上部層の堆積方法については改善が必要である.
|