可視光照射によるガス感度増強効果を利用した電界効果型水素センサデバイスを実現するために,ガス感応膜となる酸化タングステンに担持する貴金属触媒の組み合わせについて検討した.白金,パラジウム,銀の3種類の触媒を担持した感応膜は,紫色,青色,赤色LED光を同時に照射することによって,数百ppmの水素ガスの曝露に対して常温で抵抗変化を示した.しかしながら,一酸化窒素や二酸化窒素のような窒素酸化物の曝露による抵抗変化も可視光照射によって増強されてしまい,水素ガス選択性にやや問題があることが明らかとなった. 一方で,銀触媒ではなく金触媒を担持した場合は,窒素酸化物の曝露による抵抗変化が抑制された.また,アンモニア,一酸化炭素,メタンに対しても顕著な抵抗変化は生じず,優れた水素ガス選択性を示した.さらに,銀触媒の場合と比較して水素ガスに対する感度も高く,400 ppm以上の水素ガスに対して実用上十分な応答が得られた.以上のことから,白金,パラジウム,金の組み合わせが担持する貴金属触媒として有望であることが示された. また,LEDの発光色がガス応答に与える影響を評価した結果,紫色のような短波長の光は,特に銀触媒を用いた場合に水素や窒素酸化物に対するガス感度を増加させることが明らかとなった.このことから,短波長の光による酸化タングステンの光触媒効果によって,銀粒子表面への酸素吸着が促進されている可能性が示唆された.それに対して,金触媒の場合は紫色光のみでは水素ガス感度の増強効果はあまり得られず,紫色 + 青色 + 赤色の光や白色光を照射した場合に水素ガス感度が向上した.このことから,短波長の光だけでなく,緑色や赤色といった比較的長波長の光も水素の解離吸着や水分子の生成反応に寄与している可能性が示唆された.
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