2019年度から2021年の間に汗中成分をモニタリングするシステムを構築し、無侵襲での生体機能・生理的状態の評価に応用することを目指して研究を進めてきた。具体的な目標として、(1)汗に含まれている乳酸を12時間程度連続でモニタリングする技術を開発する。(2)同システムの制御回路や薬液の搬送機構を小型化することで、アームバンド型汗中乳酸モニタリングシステムを開発し、応用研究に展開する。(3)当該システムを集中治療室における組織代謝機能の評価や水泳など自由移動を伴う運動における代謝評価に応用する、という3点を掲げてきたが、最終年度である2021年度の状況は以下のように総括できる。 第一に、2020年度末の段階で、開発を進めてきたシステムが汗中乳酸の分泌動態を調べる目的に利用できる可能性が示唆されていたが、この点を詳細に検討した。これは(1)に掲げた長時間モニタリングと(2)に掲げた簡便な計測をもたらすシステムを構築するという2点が当初計画していた技術的水準に達し、これらを融合することで実現可能となったもので、(3)に相当する生体機能評価に応用したものである。より具体的には、ある状況下(安静時、運動時など)において皮膚表面に検出される乳酸が、皮膚表面に存在する乳酸が汗として汗腺から分泌しているのか、皮膚に蓄積した乳酸が溶出しているのかといった由来を区別することが可能となった。また高い定量性にて皮膚表面の乳酸量の推移を数日にわたり調べることも可能となった。
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