研究課題/領域番号 |
19K04437
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
水野 貴秀 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50270442)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 干渉計の構成 / フォトイベントの確認 |
研究実績の概要 |
ドップラーLIDARでは、ドップラー周波数を測定するために、送信光の一部と受信光を干渉計に入れて干渉縞(「うなり」)を測定するヘテロダイン検波が使われている。本研究では、①「うなり」をガイガーモードAPDで測定し、②測定方法としてデジタルによる直接カウントかAPD出力を積分したアナログレベルの測定が適切かを評価し、③散乱反射の信号をとらえる手法を実証し、ガイガーモードAPDがドップラーLIDARの検出器として利用できることを示す。 2019年度は、上記①に相当する部分、すなわち、(1)構成するFMCWレーダの基本パラメータである赤外波長および変調周期を決定して購入物品を手配、(2)赤外レーザおよび位相変調器の動作チェック、(3)可視光レーザを使ったガイド光にて干渉計を構成、(4)Si-MPPCを検出器として可視光レーザの干渉縞を測定、(5)赤外レーザおよび位相変調器を使った干渉縞を測定する計画であった。本年度は計画の中で(1)~(4)を実施した。 レーダの基本パラメータについては、予算範囲で購入できるDFBレーザ、位相変調器(E/O変調器)およびSi-MPPCの感度波長域から、レーザ波長を780nmに決定。速度1m/sを判定できるように周波数変調波は三角波による位相変調で変調周期は1MHzとした。共振型の変調器は変調電圧も低く変調周期も高くできるので速度分解能も上がるが、変調が三角波ではなく正弦波となるため、基礎的な実験には正弦波が適当と判断した。干渉計の形式はLIDARとする場合の目標への照射のしやすさを考えてマイケルソン干渉計とした。 可視光レーザ(ガイド光)によってマイケルソン型干渉計を構成して、Si-MPPCを検出器としてフォトイベントが検出できることを確認する予備実験を行った。Si-MPPCからのフォトイベントによるパルス出力を研究室所有のフォトン検出用のパルスカウンタで計数し、「うなり」とSi-MPPCからのカウント数および出力波高値の相関が見られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
5.に記載したように、LIDARとしての基本パラメータの決定と干渉計を組んだ可視光レーザ(ガイド光)での予備的な測定は達成した。Si-MPPCでのフォトイベントの波形出力は、研究室所有のフォトンカウンタSR400により、パルス波形出力をカウントすることによって行った。干渉によって生じる干渉縞(「うなり」)によって、発生するフォトイベントの発生頻度およびフォトイベントによる波形の波高値の分布が変化していることを測定。こうしたフォトイベントによる波形に対して適切な閾値を設定することで、予定通り「うなり」を読み取ることができている。ただし、現状では干渉計が不安定で、安定した測定ができない状態であるため、光学素子の固定方法やその設置定盤を堅牢なものにするなどの対策が必要である。 一方、納期が想定よりも長い製品があり、5.で述べた(1)~(5)の計画の中で、(5)赤外レーザおよび位相変調器を使った「うなり」の測定が実施できていないが、可視光による予備実験で測定ができていることからフォトイベントの読み取りは問題ないと考えている。この測定ではE/O変調器による位相変調によって、1MHzの変調が予定していた周期と変調度で変化しているか、その変調をSi-MPPCで読み取ることができるかを調査し、順調であれば変調の検出手法、すなわちSi-MPPCからのフォトイベント出力の読み取り方法に関する検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の計画で実施できなかった、赤外レーザと位相変調器を使った干渉縞の測定を実施、周期や変調度について確認する。この結果に基づいて2020年度に予定していた、フォトイベント回数を直接デジタルカウンタでカウントするか、出力波形をアナログ波形としてAD変換器によって取り込むか、あるいは、出力波形を積分器で積算してアナログ電圧レベルで読み取るか、入力レベルや周波数による変化に注意して検討する。デジタルカウンタでの読み取りが実利用上の実装は簡易である。Si-MPPCの場合は参照光による飽和に注意しながら、信号光への感度を引き出すためのレベル調整が必要で、この際にフォトイベントの読み取り方法が適しているかどうかも問題となる。更に取り込んだ情報から「うなり」成分を算出して、その精度を評価する。飽和に対しては、FM-CWレーダとしての動作をパルス的に行って平均入力を減らす方法と、干渉計を用いずに回折格子を使った分光計でドップラーLIDARを構成する方法をバックアップ手法として用意している。 「うなり」成分が順調に読み出せた場合は、干渉計のターゲット側反射ミラーを標準拡散板で置き換えるなどして、LIDARとしての評価に移行する。 上記フォトイベントの取り込み方法の検討と並行して、できるだけ早い時期に回折格子を使った分光計でドップラーLIDARを構成する方法についてバックアップとして検討を進めておく。
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次年度使用額が生じた理由 |
参考見積額と購入時の金額に差が生じたため。 来年度の物品購入に充当する。
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