研究課題/領域番号 |
19K04438
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
平田 光男 宇都宮大学, 工学部, 教授 (50282447)
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研究分担者 |
鈴木 雅康 宇都宮大学, 工学部, 助教 (10456692)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 二重積分系 / PWM型入力 / 完全追従制御 / 離散化零点 / 同期モータ / ベクトル制御 |
研究実績の概要 |
モーションコントロールの制御対象として取り扱うことの多い二重積分系は,零次ホールド離散化すると不安定零点を生ずる。しかし,申請者らの最近の研究により, PWM(Pulse width modulation)型入力系の場合,PWMパルスの生成方法を工夫すると,その不安定零点を安定化できることがわかった。そこで本研究では,PWM型入力系において安定な逆モデルに基づく完全追従制御を達成するための具体的な設計法を確立することを目的とする。 初年度において,二重積分系及び4次の高次システムに対して基本的な設計法が確立できたことから,今年度は,申請書にある「理論の拡張可能性検討」を中心に行い,不安定零点の安定化とPWMパルスの時間分解能が有限であることで生じる量子化誤差の影響を低減する動的量子化器の設計との間に接点があることを見いだした。動的量子化器は,制御対象が不安定零点を持つと,設計が困難になるという問題がある。そこで,本研究で提案する方法で不安定零点の安定化を行うと,この問題が容易に回避できることを明らかにした。この結果は,不安定零点を持つ制御対象に対しても制約無く適用できる終端状態制御(2点間を移動するための制御手法として知られる制御法)などにおいても,量子化誤差の影響を低減するためには,不安定零点の安定化が意味をなすことを示唆している。このように,PWM型入力系における不安定零点の安定化は,完全追従制御以外の制御法についても有用であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナの影響で,研究協力者である大学院生の入校が制限されたことなどから,実機実験を当初の予定通り進めるのが難しかったため,今年度は「理論の拡張可能性の検討」を中心に検討を行った。そして,完全追従制御のために必要とされたPWM型入力系の不安定零点安定化問題は,量子化誤差の影響を低減する動的量子化器の設計にも対しても有用であることを明らかにした。この成果は,申請書作成時点では想定していなかったものであり,理論的にも興味深い結果である。このように,「理論の拡張可能性の検討」において大きな進展が見られたことから,おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
完全追従制御で必要となる不安定零点の安定化問題は,量子化誤差の影響を低減するためにも有効であることを示した。今後は,数値シミュレーションなどによって,その有効性を検証する。また,初年度に提案したフィードフォワード制御器を時変系にした方法は,時不変系のように逆システムの安定性が簡単に議論できない。このような場合における逆モデルの安定性についても検討を進める。最後に,これら一連の研究を論文にまとめ,ジャーナルに投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で,学会が全てオンライン形式の実施となったため,出張費がかからず,次年度への繰り越し額が生じた.これらについては,学会参加の旅費やオープンアクセスジャーナルの論文掲載料,英文校閲料として使用する。
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