研究課題/領域番号 |
19K04439
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
櫻間 一徳 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (10377020)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マルチエージェントシステム / 分散制御 / 相対観測 |
研究実績の概要 |
本研究の主要な目的は,マルチエージェントシステムの多様なタスクを包括する新しい制御理論を構築し,タスクごとの試行錯誤を不要とする,統一的な解析・設計理論の基礎を築くことである.本年度は,その中でも,マルチエージェントシステムにおけるタスクの可観測性に着目した研究を行った.状況設定として,エージェントが得られる情報がエージェントの位置・姿勢によって変わる相対観測値である場合を考える.タスクの可観測性とは,このような相対観測値によって,タスクが達成されたかどうかを各エージェントが判断できるための性質である.その結果,タスクを所望の状態集合 T で表したとき,T の可観測性を,T の幾何的構造とネットワークの位相的構造の関係によって特徴付けた.例えば,エージェント同士の距離を合わせるフォーメーション制御では,T は回転・並進不変な集合として与えられる.この場合,必要とされる相対観測値は,回転・並進を含んでも良い.つまり,絶対座標・方向を知るためのGPSやコンパスがなくても良い.また,ネットワーク構造は,エージェントが存在する空間の次元だけクリーク(完全部分グラフ)同士が接続されたものとなる.以上の結果は一般的なものであり,様々なタスクに対して必要とされる相対観測値の特性とネットワーク構造の条件を統一的に与えるものである.また,ロバスト性を高めるために,入力ノイズがある場合でもタスクが達成される制御器を設計した.この制御器は,相対観測値に対する不変性を利用したものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
可観測性に関する研究の目処がついたため,当初予定していた内容を完遂することができた.さらに,相対観測を表すために,数学の群の不変性が利用できることを新たに発見した.このような新しい発見を含んだ内容に関する論文が,制御理論についてのトップジャーナルである IEEE Trans. on Automatic Control に採択された.また,ロバスト性を高める制御器を設計した内容の論文が,ネットワークシステムの制御についてのトップジャーナルである IEEE Trans. on Control of Network Systems に採択された.
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今後の研究の推進方策 |
マルチエージェントシステムに対する制御器の設計論を構築する.ネットワークや相対観測値に対して,与えられたタスクが実現されるための条件を導出し,その条件下でタスクを実現する制御器を設計する方法論を検討する.さらに,それを現実的なシステムに適用し,本手法の有効性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症蔓延のため会議・講演会がすべてリモートで行われた.これより出張旅費がかからなかったため,残金が発生した.次年度,会議・講演会に積極的に参加して使用する予定である.
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