本研究は,利己的マルチエージェント系に対する制御器を利己的エージェント集団と相互作用する制御エージェントととらえなおすことで,システム全体を一つのマルチエージェント系として統一的に扱える設計法を確立することを目的とする. 本研究では,多数のエージェントが,エージェント数に対して比較的少数のタスクを協力して実行する際に,自律的に利己的に自身の実行するタスクを決定することで,結果として大域的に最適なタスク割当を実現するタスク割当法の提案を行った.この手法では,複数種類の能力の異なるエージェントの存在を想定し,タスクの性質を表すベクトルとエージェントの能力を表すベクトルの内積をもとに,大域的なタスク割当の性能を評価する評価関数を構成し,この評価関数をポテンシャルとして持つポテンシャルゲームとなるようにエージェントの利得関数を設計した.また,この手法を複数種類の多数の自律移動エージェントによる領域の動的被覆問題に応用し,「被覆」,「目標追跡」,「停止」の3つのタスクを各エージェントに自律的に選択させることで,所望の領域被覆性能と目標追跡性能を実現する手法を提案した. さらに,多数のエージェントが利己的に振る舞う状況において,目標戦略分布を実現するための,人頭税や定率税と補助金を用いた制御法について検討した.特に,各エージェントが価値観の違いを認識できない状況において,目標戦略分布を実現するための,積分器を用いた補助金配分法を提案した.また,その応用として,多数のエージェントが始点から終点へ移動するとき,複数存在する経路の中からそれぞれ1つの経路を利己的に選択する利己的ルーティングと呼ばれるモデルを,出発時刻も同時に選択するものに拡張したモデルを提案し,出発時刻と経路に応じた通行料を課すことで,目標とする経路分布を実現しつつ出発時刻を分散させる手法を提案した.
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