研究課題
新型コロナ感染症の世界的流行に見られるように21世紀は感染症の時代とも言われ,感染症の流行は社会や経済に大きな損失をもたらすため,感染症流行抑制・制御は依然として公衆衛生上の重要な問題であり,効果的な感染症抑制戦略の確立が求められている.従来の感染症モデルの大半は環境の変化や個人差に起因する感染率・回復率などの揺らぎを考慮しない確定的な感染症モデルである.そこで,本研究では環境変化や個人差による感染率・回復率などの不規則な揺らぎを取り入れた実際的な感染症モデルを構築し,確率安定性理論を用いて感染者の平衡状態の安定性を明らかにした.また,新型コロナ感染症の特徴の一つである不顕性感染者(無症状感染者など)を考慮した確率感染症モデルも構成し,ワクチン接種や感染率・回復率などの不規則な揺らぎの安定性への影響を確率リヤプノフ指数を計算することにより明らかにした.さらに,シミュレーションにより,導出した安定性定理の有効性を検証した.研究成果をまとめると以下のようになる.(1)環境変化や個人差に起因する回復率や免疫喪失率などの不規則な揺らぎを取り入れた実際に即した確率感染症モデルを確率解析理論に基づき構成した.(2)感染症の流行と絶滅は各個体群の平衡状態の安定性と密接な関係があるので,確率分岐理論を適用して,感染者や回復者等の各個体群の平衡状態の安定性条件を明らかにした.(3)不顕性感染者,ワクチン接種者を考慮した確率感染症モデルを構築した.(4)シミュレーションにより提案した確率感染症モデルにおけるワクチン接種や外乱の安定性への影響を確率分岐理論を応用し明らかにした.(5)確立した感染症モデルの改善を行い,実際問題への応用の基礎を確立した.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Proceedings of the 53rd ISCIE International Symposium on Stochastic Systems Theory and Its Applications
巻: 1 ページ: 1-7
Transactions of the Institute of Systems, Control and Information Engineers
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第65回システム制御情報学会研究発表講演会論文集
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