研究課題/領域番号 |
19K04452
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
劉 康志 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (70240413)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蓄電システムの制御 / 風力発電機の制御 / 潮流計算 / 負荷周波数制御 |
研究実績の概要 |
これまでの1年間で、以下の研究成果を上げました。 1.ウィンドファームに併設する蓄電システムに対して高効率、低コストで簡便な制御法を確立した。具体的には、風力発電出力の特性に基づいてその平滑化に必要なフィルターの構造を明らかにした上、電力系統の技術要件を満たす範囲で蓄電設備容量の最小化を図った。従来法より大幅に蓄電設備容量を抑えることに成功した。 2.成果1の蓄電設備の制御に加えて、風量発電機の慣性に蓄えられた運動エネルギーを適切に活用することによって風力変動による発電機出力変動を平滑化ながら、出力低下を抑えられる制御法を提案できた。 3.再生可能エネルギー発電源が多数存在する電力系統に対する高速な最適潮流計算法を提案した。再生可能エネルギー発電が大量導入された電力系統において、電力系統全体の需給バランスを図るためには火力発電機発電計画による調整が必要不可欠となるが、そのベースとなる潮流計算は分散され、かつ、間欠性の強い再生可能エネルギー発電によって格段に複雑になり、より計算効率の高いアルゴリズムが必要となる。この要請に対して、従来法に比べて計算時間を30%以上短縮できる、ハイブリッド型の潮流計算アルゴリズムを開発した。 4.再生可能エネルギー発電源が大きなウェートを閉める電力系統において、火力発電機の安定性を高められる分散型負荷周波数制御法を開発した。電力の需給バランスを維持するには、中央指令室の発電計画による長周期変動対策のほか、発電機レベルでの負荷周波数制御も重要である。発電機は連系して運転されているため、グリッドの構造とほかの発電機の影響を考えた制御がより効率的になる。従来の分散型制御では、ほかの発電機との連系情報を生かすことはできなかった。そこで、この連系情報を十分に生かせる分散型周波数制御法を開発し、より効率的に電力系統の安定性を高めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、1年目には風力・太陽光圧電の特性解析、蓄電システムの必要容量と構成の解析を予定していたが、これまでの1年間で、以下の研究成果を上げました。 1.ウィンドファームに併設する蓄電システムに対して高効率、低コストで簡便な制御法を確立した。本成果では、蓄電システムに関する解析のみならず蓄電システムの制御法まで完成できた。 2.風車の慣性に蓄えられた運動エネルギーを適切に活用することによって風力変動による発電機出力変動を平滑化ながら、出力低下を抑えられる制御法を提案できた。風車による発電機出力平滑化制御は予定では3年目のテーマとなっていたが、1年目にほぼ完成できている。 3.再生可能エネルギー発電源が多数存在する電力系統に対する高速な最適潮流計算法を提案した。 4.再生可能エネルギー発電源が大きなウェートを閉める電力系統において、火力発電機の安定性を高められる分散型負荷周波数制御法を開発した。 成果3,4は当初計画になかったものであるが、再生可能エネルギー発電が大量導入されるスマートグリッドには欠かせない技術である。これらの技術を開発できたのは予想外の成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果を受けて、今後の研究方針として蓄電池のC-rateを軸にした、発電機と蓄電システムの協調制御に軸足を置いて研究を進める。また、システム全体の収益試算と評価を行える方法を解明していきたい。さらに、風力発電機の事故継続運転技術についても展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた学会参加等は新型コロナウィルスのためキャンセルとなり、旅費は消化できなかった。繰越金は次年度実験装置の購入および旅費に充てる予定である。
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