研究課題/領域番号 |
19K04457
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
内村 裕 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00416710)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 変動時間遅れシステム / 遠隔操作 / MPC / ネットワークロボット / 移動ロボット |
研究実績の概要 |
ネットワーク等の通信路を介した遠隔制御においては、通信路上の遅延によって状態量や制御量が遅れて伝わると、制御系の性能はもとより安定性が損なわれることが大きな課題である。系の遅延を根本的に補償するためには、制御対象の動作を予測する必要があるが、遅延時間が変動する場合には、制御対象は単に遅れて動作するのではなく、時系列の不一致によって想定外の動作となる恐れがある。 そこで本研究では、遅延の変動によって想定より早着した目標値が、制御対象における未来の目標値となることに着目し、変動による不整合を解消して生成した参照軌道に対して、モデル予測制御器 (MPC)を適用することで、制御入力を最適化するシステムの構築を目指す。当年度においては、下記のように変動時間遅れを含む遠隔操作システムについて研究を進めた。 1)ローカル側におけるモデル予測器をリモート側のフィードバック要素を考慮した機構に改善した。2)リモート側のプラントのモデルを非ホロノミックな車両に設定した際にMPCが非線形性となることを回避する線形化モデルを構築した。 3)上記理論面での検討を踏まえ、数値シミュレーションによる検証を行い従来手法との比較検討を行った。4)ネットワークの変動遅延をエミュレータで再現し,リモート側の移動ロボットをローカル側のオペレータが操作する実験システムを構築した。5)構築した遠隔操作システム上で実験を行い,提案手法の性能を検証した。 今後は,MPCを含む制御系の安定性の理論的な検証と実フィールドにおける様々な実験を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の実施においては、前年度成果について自己評価を行うと同時に学会等で発表した際に指摘された点を十分検討し、当初計画における手法を、より改善し性能を向上する手法に改善、実装した。また、同手法の検証は、数値シミュレーションおよび検証実験を繰り返し行って検討し妥当性を確認している。 以上のように、本年度においては実環境における実験も含めた検証段階にも進んでおり、おおむね順調と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年度であり、下記のような方策のもとで研究を行うと同時に、これまで構築した成果を統括する総合実験によって、本研究の総括を行う予定である。 1.遠隔側プラントに生じる外乱によるローカルの予測モデルへの影響を抑制するための制御器を設計し,実ロボットに実装したのち実験によって有効性を検証する。 2.予測ホライズンが可変となるMPCにおける安定性について保守性の小さな条件のもとでの理論面での検証を進める。 3.研究成果について国内外の学会発表をはじめとする広報につとめ,広く意見を聴取しフィードバックに努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、新型コロナウィルス感染拡大のため、研究成果発表を予定していた学会がすべてオンライン開催となり、同学会に参加するための航空運賃、宿泊費を含む渡航費が未執行となった。翌年度においては同予算を研究成果の発表のための費用に充てると同時に、実証実験をより充実するために使用する予定である。
|