ネットワーク等の通信路を介した遠隔制御においては、通信路上の遅延によって状態量や制御量が遅れて伝わると、制御系の性能はもとより安定性が損なわれることが大きな課題である。系の遅延を根本的に補償するためには、制御対象の動作を予測する必要があるが、遅延時間が変動する場合には、制御対象は単に遅れて動作するのではなく、時系列の不一致によって想定外の動作となる恐れがある。そこで本研究では、遅延の変動によって想定より早着した目標値が、制御対象における未来の目標値となることに着目し、変動による不整合を解消して生成した参照軌道に対して、モデル予測制御器 (MPC)を適用することで、制御入力を最適化するシステムの構築を目指す。本研究では下記のように未知の障害物に対する対応を含む変動時間遅れを含む遠隔操作システムについて研究を進めた。 1)リモート側に未知の障害物が現れた場合の軌道修正手法をMPCの制約条件によって定式化した。2)ローカル側のオペレータへの軌道修正結果の提示方法を検討し予測モデルと実モデルの双方を提示した。3)上記理論面での検討を踏まえ、数値シミュレーションによる検証を行い従来手法との比較検討を行った。4)ネットワークの変動遅延をエミュレータで再現し、リモート側の移動ロボットをローカル側のオペレータが操作する実験システムを構築した。5)構築した遠隔操作システム上を使用して移動ロボットを用いた実験を行い、提案手法の性能を検証した。
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