研究課題/領域番号 |
19K04464
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
櫻井 浩 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80251122)
|
研究分担者 |
高橋 学 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (50250816)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | スピントロニクス / 磁気スイッチング / スピン磁気モーメント / 軌道磁気モーメント / 磁気コンプトン散乱 / 磁歪 / X線磁気円二色性 |
研究実績の概要 |
本研究ではスピントロニクス素子の接合界面における磁化反転に伴う動的電子状態を明らかにすることを目的とする。実用上重要と考えられる垂直磁気異方性を有する磁気トンネル接合Ta/CoFeB/MgO/CoFeB界面に着目し、①CoFeB/MgOおよびCoFeB/Ta界面におけるスピン・軌道磁化の磁化反転に伴う動的挙動を測定②スピン・軌道磁化の磁化反転に伴う動的挙動と磁気カー効果・磁歪などの磁気特性との関連の解明③スピン・軌道磁化の磁化反転に伴う動的挙動に関する実験・理論の定式化に挑戦する。 ①これまでの研究成果からCoFeB/MgO界面およびCoFeB/Ta界面のスピン磁化・軌道磁化の磁化反転挙動が異なることを見出している。軌道磁気モーメントは格子と結合していることから、今年度はスピン磁化・軌道磁化の磁化反転挙動の温度変化を測定した。その結果、CoFeB/MgO界面よりCoFeB/Ta界面のほうが磁化曲線の温度変化が顕著であった。さらに、スピン選択磁化曲線に比べて軌道選択磁化曲線の温度変化が顕著であった。これは、熱アシスト磁化反転などにおいて、CoFeB/Ta界面のが軌道磁気モーメントを制御することが有効であることを示唆する。なお、全磁化曲線の温度変化は軌道選択磁化曲線の温度変化に対応していた。 また、新たにX線磁気円二色性を用いて、スピン・軌道・磁気双極子項に相当する磁化曲線の測定手法を開発し、KEK-PF実験課題採択に至っている。 ②ひずみゲージを用いた磁歪測定システムを立ち上げ、Fe薄膜について磁歪の磁場依存性の測定に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の年度計画で目標としていたCoFeB/MgO界面およびCoFeB/Ta界面のスピン磁化・軌道磁化の磁化反転挙動の温度変化の測定に成功した。解析の結果、軌道選択磁化曲線の温度変化が顕著であることを新たに見出した。これは軌道磁化が格子と結合していることを反映している。また、年度計画で目標としていたX線磁気円二色性を用いた、スピン・軌道・磁気双極子項に相当する磁化曲線の測定手法を新たに開発できた。KEK-PFに課題申請し、実験課題採択に至った。 さらに、ひずみゲージを用いた磁歪測定システムを立ち上げ、Fe薄膜について磁歪の磁場依存性の測定に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに開発した、X線磁気円二色性を用いたスピン・軌道・磁気双極子項に相当する磁化曲線の測定手法は、KEK-PFに課題申請し実験課題採択に至ったが、COVID2019の影響により実験の実施に至っていない。種々の規制緩和にあわせて、実験を遂行する。測定結果を磁気コンプトンによる測定結果と比較する。 ひずみゲージを用いた磁歪測定システムを立ち上げ、Fe薄膜について磁歪の磁場依存性の測定に成功した。今後は、CoFeB/MgO、CoFeB/Ta多層膜の測定を行いスピン・軌道選択磁化曲線と比較する。
|