研究課題/領域番号 |
19K04470
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
浅田 裕法 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70201887)
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研究分担者 |
福間 康裕 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (90513466)
仙波 伸也 宇部工業高等専門学校, 電気工学科, 教授 (40342555)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IV-VI族半導体 / スピン流 / スピンホール効果 |
研究実績の概要 |
本年度はSnTeとPbTe、および、下地強磁性層であるイットリウム鉄ガーネット(YIG)の成長条件の検討を行った。GGG(Gadolinium Gallium Garnet)基板上にマグネトロンスパッタ法によりYIGを成長後、750 ℃でアニールしているが、スパッタ時の成長条件について検討した結果、成膜時の基板温度を最適化することでYIG膜の表面ラフネス(平均面粗さ)が半分以下へ低減できた。GGG (100)および(111)基板上にYIG(40 nm)を成長させた試料上に成長条件を変えてSnTeの成長を行った。YIG膜は(100), (111)基板共にX線回折パターンにおいて基板面方向へのピークのみがみられているのに対し、SnTeはGGG(100)基板においては(100)方向へのピークのみが観察された。一方、(111)基板においても(100)基板に比べて強度がかなり弱いSnTe(100)方向のピークが観察されたことから、SnTeは(100)方向へ優先配向することがわかった。(111)基板上に成長温度および膜厚を変えてSnTeを成長し、条件の適正化を行った。また、Te供給量を変えることでキャリア濃度の変調に成功した。次に、より結晶性の良い膜を得るためにBaF2(111)基板上へのSnTeの直接成膜を行った結果、YIG上に比べ、結晶性が大きく改善された。PbTeについてはSnTeの結果を基にBaF2(111)基板上への成膜を行った。SnTeに比べて格子ミスマッチが大きいことから結晶性は劣るもののSnTe同様に基板面方向である(111)面のエピタキシャル成長膜が得られた。また、これらの試料において強磁性共鳴によりダンピング定数の評価を行った。現在、より精度を上げるための素子化にも着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SnTeおよびPbTeの基板や成長条件について検討し、エピタキシャル成長膜を得た。また、Teによるキャリア変調を確認するとともに強磁性共鳴実験についても結果を得ており、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
PbTe, SnTeについてTe組成変調によるキャリア制御を行った膜の成長条件についてさらなる検討を行い、薄膜作製を行う。このとき、膜厚についても検討する。また、BaF2基板では電気的計測において劈開による表面段差の問題があるため、新たな基板についても検討するとともに、作製した試料のスピン流生成について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗により当初の予定より安価な基板を用いた実験となったことおよび装置維持のための経費が必要なことが判明したことから、今年度予算の一部を次年度に回した。
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