研究課題/領域番号 |
19K04473
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
谷田部 然治 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (00621773)
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研究分担者 |
ASUBAR JOEL 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (10574220)
末吉 哲郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (20315287)
中村 有水 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (00381004)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ミストCVD / ゲート絶縁膜 / 表面パッシベーション / 電子準位 / 窒化物半導体 / 高電子移動度トランジスタ / パワーデバイス / 高周波デバイス |
研究実績の概要 |
本年度は主にショットキーゲート構造を有するAlGaN/GaN高電子移動度トランジスタ(SG-HEMT)とミスト化学気相成長(ミストCVD)法によるゲート絶縁膜を有するAlGaN/GaN MOS-HEMTを作成し、SG-HEMTとMOS-HEMTの特性を詳細に測定・解析をし比較した。これらの解析結果を基にミストCVD法により堆積したゲート絶縁膜の特性、及びゲート絶縁膜/AlGaN界面の特性を調査した。本年度の成果を以下にまとめる。
(1) AlGaN/GaN SG-HEMTとMIS-HEMTのゲートリーク電流を比較すると、MIS-HEMTにおいて順バイアスでは7桁、逆バイアスでは3桁低い値を示した。またAlGaN/GaN MIS-HEMTの出力特性は、ゲート絶縁膜による順バイアス印可時のリーク電流の抑制により、SG-HEMTよりも良好な特性を示した。また逆バイアス印可時の絶縁破壊電圧を比較すると、ミストCVD法によるゲート絶縁膜の効果により、絶縁破壊電圧は約50 %向上した。以上のようにミストCVD法によるゲート絶縁膜は窒化物半導体のパワーデバイス応用に有用であることが示唆された。 (2) AlGaN/GaN MIS-HEMTの伝達特性には電圧掃引によるヒステリシスが、ほとんど無かった。すなわち良好なゲート絶縁膜/AlGaN界面が形成されていることが示唆された。またAlGaN/GaN SG-HEMTとMIS-HEMTの伝達特性を比較するとAlGaN/GaN MIS-HEMTの方が3桁オンオフ比が増加し、サブスレッショルド係数も低かった。 以上より窒化物半導体デバイスへのゲート絶縁膜堆積手法として、ミストCVD法が有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミストCVD法によるゲート絶縁膜堆積条件を最適化することにより、AlGaN/GaN MIS-HEMTは優れたデバイス特性を示した。またデバイス特性に多大な影響を与える絶縁膜/AlGaN界面の電子準位密度についても定量的に評価することができた。よって概ね順調に研究が進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度得られた知見をもとに、実用化に必須なノーマリーオフデバイスの実現とトランジスタの動作特性向上を目指す。具体的には以下の2項目を重点的に推進する予定である。 (1) ドライエッチング + ミストCVD法によるリセスゲート構造を有するノーマリーオフAlGaN/GaN MIS-HEMTの試作に挑戦し、MIS界面特性・トランジスタ動作特性の解析を詳細に行う。 (2) ゲート絶縁膜として最も使われているAl2O3よりも誘電率が高いゲート絶縁膜をミストCVD法により堆積し、トランジスタの動作特性向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
電極用金属、及びミスト原料溶液代として計上していた予算の一部について、効率的に研究が進んだため予定より使用額が少なかった。またコロナ禍により、予定していた学会出張の中止、及び分担者との研究打ち合わせをweb会議に変更したため、予定より使用額が少なかった。研究の進展にあわせて効果的に使用することが望ましいと判断し、次年度使用額が生じた。 今後、さらに詳細な評価が必要になると思われるC-V特性の数値計算用の計算機購入費用に充てる計画である。
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